専門用語解説
債券スプレッド
債券スプレッドとは、ある債券の利回りと、比較対象となる指標(一般には同一通貨・同一残存期間の国債やスワップ金利など)の利回りとの差のことを指します。これは、信用リスクや流動性リスク、発行体の財務状況、市場の需給、さらには税制上の違いなど、複数の要因を反映した「リスクプレミアム」として機能します。
たとえば、企業が発行する社債の利回りが国債より高いのは、国よりもデフォルトリスク(債務不履行リスク)が高いと市場が判断しているためであり、その差分が債券スプレッドです。投資家はこのスプレッドを「リスクに見合った上乗せ利回り」として捉え、その債券への投資妙味や相対的な割安度を判断します。
スプレッドの水準が高い場合、リスクが大きいと評価されていることを意味し、逆にスプレッドが小さいほど市場からの信用が厚いと見なされているといえます。ただし、同じ発行体でも劣後債やオプション付き債(例:繰上償還権付き)などは、通常の社債よりスプレッドが大きくなる傾向があります。
また、スプレッドは景気サイクルや金融政策、地政学リスクなどによって変動しやすく、特に景気悪化や金融不安の局面では、投資家がリスクを回避しようとするため急拡大する傾向があります。そのため、債券スプレッドは「市場の不安のバロメーター」とも呼ばれます。
通常、スプレッドはベーシスポイント(1bp = 0.01%)で表記され、たとえば「スプレッドが50bp拡大」とは、0.5%分リスクプレミアムが上乗せされたことを意味します。
投資判断においては、スプレッドの絶対水準だけでなく、スプレッドの変化(拡大・縮小)やスプレッド曲線(ターム構造)の傾きも重要な分析対象となります。CDSスプレッド(クレジット・デフォルト・スワップ)との比較や、過去平均との乖離分析なども行われます。