専門用語解説
寡婦年金(かふねんきん)
寡婦年金は、国民年金第1号被保険者だった夫が亡くなったとき、一定の条件を満たす妻(主に子のいない専業主婦層)が60歳から65歳になる前まで受け取れる「つなぎ給付」です。夫の保険料納付済期間(免除期間を含む)が10年以上あり、妻自身が遺族基礎年金・障害基礎年金を受けられない場合に限って支給されます。妻は生計維持関係(年収850万円未満が目安)を証明する必要があり、再婚すると失権します。
2025年度(令和7年度)の年金額は次のとおりです。
項目 | 月額 | 年額 |
---|---|---|
老齢基礎年金(満額) | 69,308円 | 831,700円 |
寡婦年金(老齢基礎の4分の3) | 51,981円 | 623,775円 |
支給は妻が60歳になった月の翌月から始まり、65歳になる月分で終了します(以後は自分の老齢基礎年金へ切替)。妻が死亡するか再婚・内縁関係が成立した時点でも打ち切られます。子がいる家庭はまず遺族基礎年金が優先され、子が18歳年度末を迎えた後に条件を満たせば寡婦年金へ移行する仕組みです。厚生年金に加入していた夫の場合、遺族厚生年金との併給は可能ですが、組合せ調整により一方が全額または一部停止されることがあります。
寡婦年金の請求は、死亡日の翌日から5年以内に市区町村役場または年金事務所で行います。戸籍謄本、年金手帳(基礎年金番号通知書)、生計維持・収入証明などを揃えて申請します。5年を過ぎると時効で受給権そのものが消滅しますので注意が必要です。
税務面では、相続税法12条により相続税の課税対象外ですが、受給後は雑所得として所得税・住民税の計算に含まれます。金額が比較的小さいため、老齢基礎年金や遺族厚生年金、退職金、私的年金、預貯金などと合わせたキャッシュフロー設計が不可欠です。具体的な併給試算や受給手続きの確認には、日本年金機構の年金見込額試算サービスや社会保険労務士・ファイナンシャルプランナーへの相談を活用すると安心でしょう。