
インカムゲインとキャピタルゲインとは?その特徴について徹底解説!
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公開:
2023.04.02
更新:
2025.06.08
株高や高配当株ブームで「値上がり益」と「配当・利息収入」が混同されがちですが、収益源が異なれば期待リターンもリスクも変わります。配当だけを頼りにすると増配停止で資金繰りが崩れるおそれがあり、逆に値上がり益狙い一辺倒では暴落時に元本を大きく失う恐れがあります。本記事では両ゲインの特徴、税制・流動性・市場変動率を比較し、ライフプランに合った配分比率を選ぶ判断軸を提示します。とはいえ両方をバランス良く取れば、安定収入と成長潜在力を併せ持つポートフォリオが構築できます。変動幅の見極めや再投資戦略、税負担まで具体的に整理することで、数字に基づいた判断ができるようになります。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、配当・利息などのインカムゲインと値上がり益であるキャピタルゲインの違いが一目瞭然になり、収益規模・価格変動・税率・流動性を比べながら自分に合う比率を決める手順がわかります。株式・債券・不動産の実例を交えた比較表とチェックポイント付きなので、初心者は基礎固めに、経験者は配分見直しの指針に活用でき、迷わず次のアクションへ進めます。さらに、分配再投資と課税タイミングを組み合わせた総リターン最大化のコツまで押さえられるため、読後には自分の資産目的に応じた実行プランが描けます。自信が深まります。
インカムゲインとは?その特徴
インカムゲインとは、株の配当金や債券の利息、不動産の家賃収入のように、資産を保有することで継続的に受け取ることができる利益のことです。インカム(Income)は「定期的に入る収入」、ゲイン(Gain)は「利益」という意味があります(ちなみにインカムゲインは和製英語であり、英語では"Investment Income"というのが一般的です。
得られる利益が比較的小さい
インカムゲインは一般的に、キャピタルゲインと比較すると、得られるリターン(利益)が比較的小さいという特徴があります。
例えば、高金利として個人投資家の人気が高いソフトバンクグループの社債であっても、その利率は年1.38%(第56回普通社債)程度です。
2020年の日経平均株価の年間上昇率が54%であったことを考えると、一般的にインカムゲインはキャピタルゲインと比較して、得られるリターンが小さいといえそうです。
安定的に利益を獲得できる
インカムゲインは安定的に利益を獲得できます。社債の場合は、決まった金額の利息が支払われますし、不動産の場合も、テナントや入居者の増減によって多少の増減があるとはいえ、ある程度決まった金額の家賃収入が入ってきます。
利益の安定性はインカムゲインの大きな魅力の一つであり、そのことに魅力を感じてインカムゲインを狙う投資家も多く存在します。そのため、金融商品の中には、元本を毀損させてまで、配当や分配金を出し続けるタコ足配当・タコ足分配を(利益を伴わない配当・分配)行うものも存在するので、注意が必要です。
大きく損をする可能性が低い
インカムゲインを狙った投資は、キャピタルゲインを狙った投資と比較して、一般的に大きく損をする可能性は低いという特徴があります。
下表は格付ごとの社債デフォルト率です(デフォルトとは、元利金の支払いが一部でも滞ることを指します)。
(出所:日本格付研究所(JCR)「格付推移マトリックス・累積デフォルト率」)
投資適格債の格付下限であるBBB格を見てみると、5年累積デフォルト率は2.29%であることがわかります。日本国内に出回っている社債はほとんどが投資適格債ですから、社債投資によって元本割れするリスク(=大きく損をする可能性)は低いといえるでしょう。
ここでは一例として社債を取り上げましたが、株式の配当や家賃収入など、そのほかのインカムゲインを狙った投資でも、リスクの差こそあれ、同様のことがいえます。
定期的・継続的に利益を得られる
例えば不動産の家賃収入であれば月に1回、社債の利息収入であれば半年に1回という頻度で収入を得られるように、インカムゲインは、資産を保有している期間中、定期的・継続的にリターンを得られるという特徴があります。
キャピタルゲインとは?その特徴
キャピタルゲインとは、株式や不動産といった資産を売却することで受け取ることができる利益のことです。資産の売却により生じる損失は「キャピタルロス」と呼ばれます。ちなみにキャピタル(Capital)は資本・資産という意味があります(こちらは英語でもCapital Gainです)。
キャピタルゲインは、資産そのものの価値を源泉として収益を獲得するのに対し、インカムゲインは資産から生み出される果実を源泉として、収益を獲得します。
キャピタルゲインは一般的に、インカムゲインと比較すると、得られるリターン(利益)が比較的大きいという特徴があります。
下のグラフは、2020年1月から2021年1月までの日経平均株価の推移です。
もし2020年1月6日に日経平均に連動するETFを購入したケースにおいて、2021年1月26日に売却した場合は、投資元本対比プラス18%の利益となります。
先ほど紹介したソフトバンクグループの社債利率が年1.38%であることを考えると、1年強で18%という比較的大きな利益を得られることがわかります。
大きく損をする可能性がある
得られる利益が比較的大きい半面、大きく損をする可能性もあります。
先ほどの例では、仮に2020年3月19日に売却した場合、その損益は投資元本対比マイナス29%と大きく損失を被ることになります。社債投資の元本割れリスクが低いことを考えると、キャピタルゲインを狙った投資は、インカムゲインを狙った投資と比較して、大きく損をする可能性があります。
売却時にのみ利益を得られる
インカムゲインは、定期的・継続的に利益を得ることができますが、キャピタルゲインは、資産の売却益ですので、資産売却時にのみ利益を得ることができます。
インカムゲイン・キャピタルゲインの例と税務上の取扱い
運用商品ごとの内容例
主要な運用商品ごとのインカムゲインとキャピタルゲインは下表の通りです。
インカムゲイン | キャピタルゲイン | |
---|---|---|
株式 | 配当収入 | 株価値上がり時の売却益 |
債券 | 利息収入 | 償還前の債券売却益 |
投資信託 | 分配金 | 価格値上がり時の売却益 |
不動産 | 家賃収入 | 不動産売却益 |
一般的に、株式や一部の投資信託(ブル・ベア型ファンド等)は価格変動が激しいので、キャピタルゲインとインカムゲインの両方を狙いやすい商品だと言えます。
一方、債券や不動産、投資信託の多くは、急激な価格変動が起こりづらいので、インカムゲインを狙いやすい商品だといえます。
所得税の税率
先ほどの分類に基づき、所得税の税率をまとめてみました。
インカムゲインの 税率 | キャピタルゲインの 税率 | |
---|---|---|
株式 | 20.315% | 20.315% |
債券 | 20.315% | 20.315% |
投資信託 | 20.315% | 20.315% |
不動産 | 15%〜55% | 所有期間5年以下:39.63% 所有期間5年超:20.315% |
株式や債券、投資信託といった金融商品は、インカムゲイン・キャピタルゲインの区別に関わらず、税率は20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)です。
不動産は、家賃収入が他の所得と合算した上で課税されるため、税率は所得の大きさによって15%〜55%の間で変動します。売却益については、所有期間が5年以下の場合39.63%(所得税30%+復興所得税0.63%+住民税9%)、5年超の場合は20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税0.315%)となり、税率が5年を境に半減します。
運用商品の税務上の取扱いについては、後日別記事で解説する予定です。
この記事のまとめ
インカムゲインは安定収入を、キャピタルゲインは成長余地を提供しますが、利回りだけでなく変動幅や課税タイミング、売買コスト、換金性を横並びで点検し、他資産との相関やライフイベントへの資金需要と照合して配分を決めることが肝心です。半年〜1年ごとに目標と乖離をチェックし、環境変化に応じて比率を微調整すれば、総リターン最適化とリスク管理を両立できます。チェックポイントには税引後利回り、信用リスク、エリア分散も含めると判断精度が向上します。ポートフォリオ全体でリスク許容度との整合を常に確認しましょう。必要に応じて専門家に相談するのも選択肢です。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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インカムゲイン(インカム)
インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。
キャピタルゲイン(売却益)
キャピタルゲイン(売却益)とは、保有していた資産を売却することで得られる利益のことを指します。株式や不動産、債券、金などの貴金属を購入時の価格より高い価格で売却した場合、その差額がキャピタルゲインです(対義語:インカムゲイン)。 例えば、1,000円で購入した株を1,500円で売却すれば、500円がキャピタルゲインです。ただし、売却時には税制や手数料を考慮する必要があり、特に金融資産では 譲渡益課税 が適用されることが多くあります。 キャピタルゲインは、大きなリターンを得られる可能性がある一方で、購入時より価格が下がると 元本割れのリスク も伴います。そのため、資産運用では 売却益の確保 と 税負担の最適化 が重要な戦略の一つです。
利回り
利回りとは、投資で得られた収益を投下元本に対する割合で示し、異なる商品や期間を比較するときの共通尺度になります。 計算式は「(期末評価額+分配金等-期首元本)÷期首元本」で、原則として年率に換算して示します。この“年率”をどの期間で切り取るかによって、利回りは年間リターンとトータルリターンの二つに大別されます。 年間リターンは「ある1年間だけの利回り」を示す瞬間値で、直近の運用成績や市場の勢いを把握するのに適しています。トータルリターンは「保有開始から売却・償還までの累積リターン」を示し、長期投資の成果を測る指標です。保有期間が異なる商品どうしを比べるときは、トータルリターンを年平均成長率(CAGR)に換算して年率をそろすことで、複利効果を含めた公平な比較ができます。 債券なら市場価格を反映した現在利回りや償還までの総収益を年率化した最終利回り(YTM)、株式なら株価に対する年間配当の割合である配当利回り、不動産投資なら純賃料収入を物件価格で割ったネット利回りと、対象資産ごとに計算対象は変わります。 また、名目利回りだけでは購買力の変化や税・手数料の影響を見落としやすいため、インフレ調整後や税控除後のネット利回りも確認することが重要です。複利運用では得た収益を再投資することでリターンが雪だるま式に増えますから、年間リターンとトータルリターンを意識しながら、複利効果・インフレ・コストを総合的に考慮すると、より適切なリスクとリターンのバランスを見極められます。