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ETFとは?初心者向けに仕組み・メリット・投資信託との違いをわかりやすく解説
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公開:
2023.04.02
更新:
2026.03.24
資産運用の選択肢としてETFという言葉を見聞きする機会が増えていますが、投資信託や個別株との違いが曖昧なままでは、自分に合う商品か判断しづらいのが実情です。仕組みを理解しないまま購入すると、想定外のコストや値動きに戸惑う可能性もあります。この記事では、ETFの基本的な仕組みから種類、メリット・デメリット、選び方、新NISAでの活用法までを体系的に解説します。
目次
ETFの基本をまず押さえよう
ETFとは「Exchange Traded Fund」の略で、日本語では「上場投資信託」と呼ばれる金融商品です。日経平均株価やS&P500などの特定の指数(インデックス)に連動する運用成果を目指しており、証券取引所に上場しているため、株式と同じようにリアルタイムで売買できます。
投資信託の「分散投資のしやすさ」と、株式の「機動的な売買」を兼ね備えた商品として、初心者から機関投資家まで幅広く活用されています。ETFGIの調査によると、2025年末時点で世界のETF純資産総額は約19.6兆ドル(約3,076兆円)、本数は14,152本に達しました。
- 日本国内でも、東証が公表した「ETF受益者情報調査2025年版」によると、国内ETF残高は約93.8兆円、受益者数は初めて200万人を突破しています。新NISAの開始以降、個人投資家の参入が加速しており、「低コスト×分散×リアルタイム売買」というETFの特性が改めて注目を集めている状況です。
ETFはいくらから買える?最低投資金額の目安
ETFの最低購入金額は「売買単位(口数)× 市場価格」で決まります。売買単位は銘柄ごとに1口・10口・100口・1,000口の4種類があり、東証上場ETFの約7割は最低投資金額が2万円以下です。
| 銘柄例 | 銘柄コード | 売買単位 | おおよその最低購入金額 |
|---|---|---|---|
| ダイワ上場投信-トピックス | 1305 | 10口 | 約3万円 |
| NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 | 1321 | 1口 | 約4万円 |
| MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 | 2558 | 1口 | 約2.5万円 |
| NF・日本高配当70ETF | 1577 | 1口 | 約3万円 |
※上記は市場価格により日々変動します。別途、証券会社所定の売買手数料がかかる場合があります。
投資信託が100円から金額指定で購入できるのに対し、ETFは「口数指定」でしか購入できません。1口が数百円の銘柄もあれば、数万円の銘柄もあるため、購入前に売買単位と市場価格を必ず確認しましょう。
なお、主要ネット証券では国内ETFの売買手数料を無料にしているケースが多く、最低購入金額=手元に必要な資金と考えてほぼ差し支えありません。「投資信託ほど少額ではないが、個別株(100株単位)と比べるとはるかに手軽」というのがETFの立ち位置です。
ETFの仕組み|なぜ指数に連動するのか
ETFが特定の指数に連動する仕組みには、主に「現物拠出型」と「リンク債型」の2つがあります。
| 方式 | 主な対象 | 仕組み | 指数に連動する理由 |
|---|---|---|---|
| 現物拠出型 | 国内株式ETF | 大口投資家(指定参加者)が対象指数と同じ構成銘柄のバスケット(株式のセット)を運用会社に拠出し、代わりにETFの受益証券を受け取る | ETFの中身が指数の構成銘柄そのものであるため、自然と指数に連動する |
| リンク債型 | 外国株式・債券のETF | 運用会社が金融機関の発行するリンク債(指数に連動する債券)に投資する | リンク債を通じて間接的に指数への連動を実現する |
ETFの市場価格は、投資家の需給によってリアルタイムで変動します。一方、ETFの本来の価値を示す基準価額は1日1回算出されるため、市場価格と基準価額にはズレ(乖離)が生じる場合があります。この乖離を裁定取引(アービトラージ)によって縮小させる仕組みが組み込まれている点も、ETFが指数から大きく外れない理由の一つといえるでしょう。
ETFと投資信託の違いを8つの比較軸で整理
ETFは「上場している投資信託」ですが、上場しているか否かで多くの違いが生まれます。以下に主要な8つの比較軸を整理しました。
| 比較項目 | ETF | 投資信託(非上場) |
|---|---|---|
| 上場・非上場 | 証券取引所に上場 | 非上場 |
| 販売会社 | 証券会社のみ(全銘柄購入可能) | 銀行・証券・郵便局等(取扱商品は販売会社ごとに異なる) |
| 取引価格 | 市場の時価(リアルタイム変動) | 基準価額(1日1回算出) |
| 取引時間 | 取引所の立会時間中(東証:9~15) | 販売会社の営業時間内(注文締切は原則15) |
| 発注方法 | 指値注文・成行注文が可能 | 基準価額での約定(価格指定不可) |
| 信託報酬 | 低い傾向(0.06%~0.95%程度) | やや高い傾向(0.10%~1.65%程度) |
| 自動積立 | 対応していない証券会社が多い | ほとんどの販売会社が対応 |
| 信用取引 | 可能 | 不可 |
※東京証券取引所の後場の取引終了時刻は、2024年11月5日に15:00から15
以下では、特に重要なポイントを補足します。
取引価格と発注方法の違い
ETFは取引所の立会時間中に時価で売買できるため、「今この瞬間の価格で買いたい」といったニーズに対応可能です。指値注文では「○○円で買う」と価格を指定でき、成行注文では即座に約定させられます。
一方の投資信託は、注文時点で適用される基準価額が確定していません。15
手数料構造の違い
ETFの売買手数料は証券会社によって異なりますが、主要ネット証券では国内ETFの売買手数料が無料になっているケースも増えました。保有期間中にかかる信託報酬もETFのほうが一般的に低い傾向にあります。
- 投資信託は購入時に手数料(約定代金の0~3%前後)がかかる場合があるほか、解約時に「信託財産留保額」(0.1~0.5%程度)が差し引かれる商品も存在します。なお、購入時手数料が無料の投資信託は「ノーロード」と呼ばれ、近年はノーロード商品が主流になりつつあります。
ETFと個別株の違いは?中間的な性質をもつ商品
ETFは「投資信託と株式の中間的な性質」をもつ商品とも表現されます。個別株との違いを理解しておくと、使い分けがしやすくなるでしょう。
| 比較項目 | ETF | 個別株 |
|---|---|---|
| 分散効果 | 1口で複数銘柄に分散投資できる | 1社への集中投資になる |
| 銘柄分析の手間 | 指数を選ぶだけで済む | 企業の財務・業績を自分で分析する必要がある |
| 値動きの要因 | 市場全体や指数の動向に連動 | 企業業績・不祥事など個別要因の影響が大きい |
| 株主優待 | なし | 銘柄によってはあり |
| 配当・分配金 | 分配金として受け取る(自動再投資不可) | 配当金として受け取る |
| 信託報酬 | 保有中にかかる(年0.06%~0.95%程度) | かからない |
| 売買単位 | 銘柄ごとに異なる(1口~) | 原則100株単位(単元未満株を除く) |
| 向いている人 | 市場全体の成長を取り込みたい人・銘柄選びに時間をかけられない人 | 特定企業に確信がある人・株主優待を狙いたい人 |
個別株は1社への集中投資になるため、企業業績や不祥事などの個別要因で大きく値動きする可能性があります。対してETFは複数の銘柄で構成された指数に連動するため、1銘柄で手軽に分散投資の効果が得られます。
たとえばTOPIX連動型のETFを1口購入すれば、東証プライム市場に上場する約2,000銘柄に間接的に投資したのと同じ効果が期待できるわけです。銘柄分析に時間をかけられない方や、市場全体の成長を取り込みたい方にはETFが向いています。
- 一方で、特定の企業に強い確信がある場合や、株主優待を目的とする場合には個別株のほうが適しています。ETFには株主優待がなく、配当に相当する分配金も投資信託とは税務上の扱いが異なる点に注意が必要です。
ETFの種類|インデックス型からアクティブ型まで
ETFは連動する対象によって多様な種類に分かれます。代表的な分類を以下にまとめました。
| 分類 | 連動するインデックス例 | 商品例 |
|---|---|---|
| 国内株式 | TOPIX、日経平均株価 | ダイワ上場投信-トピックス、MAXIS日経225上場投信 |
| 外国株式 | S&P500、MSCI ACWI | 上場インデックスファンド米国株式(S&P500) |
| 国内債券 | NOMURA-BPI総合 | NEXT FUNDS国内債券・NOMURA-BPI総合連動型上場投信 |
| 外国債券 | FTSE米国債インデックス | iシェアーズ 米国債1-3年 ETF |
| REIT | 東証REIT指数 | One ETF 東証REIT指数 |
| コモディティ | 金、WTI原油先物 | 純金上場信託、WTI原油価格連動型上場投信 |
| レバレッジ型 | 日経平均レバレッジ・インデックス | 日経平均ブル2倍上場投信 |
| インバース型 | 日経平均ダブルインバース・インデックス | 日経平均ベア2倍上場投信 |
レバレッジ型・インバース型の注意点
レバレッジ型は、原指数の日次変動率を2倍にした動きを目指す商品です。たとえば日経平均が前日比+1%なら、レバレッジ型は+2%になるよう設計されています。「レバレッジ(leverage)」は「てこ」を意味し、少ない資金で大きなリターンを狙える反面、損失も2倍になるリスクを負います。
インバース型は、原指数と逆方向に動くよう設計された商品です。日経平均が+1%なら、ダブルインバース型は-2%の値動きを目指します。「インバース(inverse)」は「逆の」という意味で、相場下落局面でのヘッジ手段として使われることがあります。
ただし、レバレッジ型・インバース型はいずれも日次の変動率に対して倍率がかかる仕組みです。保有期間が長くなるほど、原指数との乖離が累積する「減価」が起こりやすくなります。短期の戦術的利用には向きますが、長期保有には適さない点に十分注意してください。
アクティブ運用型ETF
2023年6月に東証がアクティブETFの上場制度を解禁し、同年9月に国内初となる6銘柄が上場しました。従来のETFは特定の指数への連動を目指すインデックス型のみでしたが、アクティブETFはファンドマネージャーが独自の判断で銘柄を選定し、指数を上回るリターンを目指す点が異なります。
世界に目を向けると、2024年12月末時点でアクティブETFの銘柄数は3,189本、残高は合計1.17兆ドルに達しています。日本ではまだ発展途上ですが、2025年2月には東証が上場基準の緩和を発表するなど、今後さらに商品の多様化が進む見込みです。
ETFとETNの違い
ETFと名前が似た商品に「ETN(Exchange Traded Note:上場投資証券)」があります。ETFが実際に株式や債券などの現物資産を保有して運用するのに対し、ETNは発行金融機関の信用力を裏付けとした債券です。
ETNは現物資産を持たないため、トラッキングエラー(指数との乖離)が発生しにくいメリットがある一方、発行体の信用リスク(デフォルトリスク)を負う点が大きな違いです。ETFとETNは東証で同じように売買できますが、リスクの性質が異なるため混同しないよう注意しましょう。
東証ETFと海外ETFの違い
ETFには東証に上場する「国内ETF」のほかに、米国市場など海外の取引所に上場する「海外ETF」があります。VOO(バンガード・S&P500 ETF)やVTI(バンガード・トータル・ストック・マーケットETF)など、米国籍ETFの人気銘柄は日本の主要ネット証券からも購入可能です。両者の主な違いを整理しました。
| 比較項目 | 東証ETF | 海外ETF(米国ETF) |
|---|---|---|
| 取引通貨 | 日本円 | 米ドル等の外貨 |
| 為替手数料 | 不要 | 円→外貨への両替時に発生 |
| 取引時間 | 東証の立会時間(9~15) | 現地市場の取引時間(米国市場は日本時間23~翌6、夏時間は22~翌5) |
| 銘柄数 | 約300銘柄 | 数千銘柄(証券会社の取扱いによる) |
| 信託報酬(経費率) | 0.06%~0.95%程度 | 0.03%~程度(米国籍ETFは低い傾向) |
| 分配金の二重課税 | 2020年の税制改正以降、自動で二重課税調整が適用される | 現地で約10%が源泉徴収されたうえ、日本で20.315%が課税される(二重課税) |
| 二重課税への対処 | 投資家側の手続きは原則不要 | 確定申告で外国税額控除を申請する必要がある |
| 為替リスク | ETFの中身が外国資産なら間接的に存在 | 為替レートの変動が直接損益に影響 |
初心者は東証ETFが手軽
海外ETFは経費率の安さや銘柄の多さで魅力がありますが、外貨への両替、深夜帯の取引、確定申告での外国税額控除といった手間が伴います。同じS&P500に連動する商品でも東証にはMAXIS米国株式(S&P500)上場投信(2558)やNEXT FUNDS S&P 500 指数連動型上場投信(2633)など信託報酬0.1%以下の銘柄があり、二重課税の自動調整も適用されるため、初心者にはまず東証ETFから始めるのがおすすめです。
- 海外ETFを検討するのは、東証にない指数やセクターに投資したい場合や、コスト差が大きい場合に限定するのが合理的でしょう。なお、NISA口座で海外ETFの分配金を受け取る場合、日本では非課税になるものの米国での10%源泉徴収は免除されない点にも注意が必要です。
ETFのメリット
ここまでETFの仕組みや種類を見てきましたが、結局のところ「なぜETFが選ばれるのか」が気になる方も多いでしょう。ETFが投資家から支持される理由は、コスト・利便性・透明性の3つに集約されます。それぞれ具体的に確認していきましょう。
①手軽に分散投資ができる
ETFが連動する指数は、複数の銘柄で構成されています。たとえばS&P500連動型ETFなら、米国を代表する約500社に1口で分散投資した効果が得られます。個別銘柄を自分で選ぶ手間やリスクを大幅に軽減できる点は、初心者にとって大きな魅力です。
②投資信託より保有コストが低い傾向にある
一般的にETFの信託報酬は投資信託より低く設定されています。長期保有では信託報酬の差がリターンに大きく影響するため、同じ指数に連動する商品であればコスト面でETFが有利です。
③リアルタイムで売買できる
投資信託は1日1回の基準価額でしか取引できませんが、ETFは取引所が開いている時間帯ならいつでも時価で売買可能です。急な相場変動に対して機動的に対応したい方には、この点が大きなメリットとなります。
④値動きの透明性が高い
ETFは市場価格がリアルタイムで表示されるため、「今いくらで買えるか」が常に把握できます。構成銘柄も日々開示されており、自分が何に投資しているのかが明確です。投資判断の根拠を自分で確認しやすい透明性の高さは、ETFならではの特徴です。
ETFのデメリット
メリットが多いETFですが、万能な商品ではありません。特に投資信託と比べたときに「使い勝手の悪さ」を感じる場面があります。購入してから後悔しないよう、事前にデメリットも把握しておきましょう。
①自動積立に対応していないケースが多い
投資信託では多くの販売会社が自動積立サービスを提供しており、「毎月○万円」といった定額積立が簡単に設定できます。しかしETFでは自動積立に対応している証券会社が限られており、購入のたびに手動で注文する必要がある場合が大半です。
②ポートフォリオのリバランスを自力で行う必要がある
投資信託にはバランス型ファンド(国内外の株式・債券を一定比率で自動調整する商品)が存在しますが、ETFにはこれに相当する商品がありません。複数のETFで資産配分を組む場合、比率が崩れたときのリバランス(再調整)は自分で判断・実行する必要があります。
③流動性の低い銘柄は取引しにくい
ETFの価格は市場の需給で決まるため、出来高(売買量)が少ない銘柄では売り手や買い手が見つからず、希望する価格で取引が成立しない場合があります。さらに、売値と買値の差(スプレッド)が広がりやすくなり、実質的な取引コストが増大するリスクも存在します。
銘柄を選ぶ際には出来高の多さを必ず確認しましょう。なお、東証では「マーケットメイク制度」を導入しており、指定されたマーケットメイカーが常時注文を出すことで流動性を確保している銘柄もあります。
④分配金の自動再投資ができない
投資信託では分配金を自動的に再投資する設定が可能ですが、ETFでは原則としてできません。分配金は課税されたうえで現金として受け取る形になるため、手動で再投資する手間がかかります。
長期投資では「分配金を再投資して複利効果を最大化する」のが基本戦略です。ETFの場合はこの自動再投資ができないぶん、投資信託と比べて複利効果の面でやや不利になる可能性がある点は見落としがちなデメリットといえます。
ETFの主なリスク
ETFは元本保証の商品ではありません。投資を行う以上、さまざまなリスクを負うことになります。ここでは主要な5つのリスクを整理します。
①価格変動リスク
ETFが連動する指数そのものが下落すれば、ETFの価格も下がります。株式型ETFであれば景気後退や金融危機の影響を受け、債券型ETFであれば金利上昇局面で基準価額が下がる可能性があります。
分散投資によって個別銘柄リスクは軽減されますが、市場全体の下落に対しては無力である点を理解しておきましょう。
②為替変動リスク
外国資産に投資するETF(S&P500連動型など)は、為替レートの影響を受けます。たとえば米国株が値上がりしても、同時に円高・ドル安が進めば円建てのリターンは目減りします。
為替変動を避けたい場合は「為替ヘッジあり」の銘柄を検討する選択肢もありますが、ヘッジコストがかかる点はトレードオフとなります。
③流動性リスク
出来高が少ない銘柄では、売りたいときに買い手が見つからない、あるいはスプレッド(売値と買値の差)が大きく広がって不利な価格で約定するリスクがあります。
デメリットの項目でも触れたとおり、銘柄選びの段階で出来高とマーケットメイク制度の対象かどうかを確認することが重要です。
④繰上償還リスク
純資産総額が極端に小さいETFは、運用会社が運用を継続できないと判断した場合に繰上償還(運用の終了)される可能性があります。繰上償還が行われると、その時点の基準価額で強制的に換金されるため、投資家が想定していた投資期間を全うできなくなります。
純資産総額が一定以上ある銘柄を選ぶことで、このリスクは大幅に軽減できます。
⑤信用リスク(リンク債型・ETNの場合)
リンク債型ETFやETNは、発行体である金融機関の信用力に依存しています。万が一、発行体が債務不履行(デフォルト)に陥った場合、投資元本の一部または全部を失う可能性があります。一方、現物拠出型のETFは信託銀行に資産が分別管理されているため、運用会社や信託銀行が破綻しても投資家の資産は法的に保全される仕組みになっています。
これらのリスクはETFに限った話ではなく、投資全般に共通する要素です。大切なのはリスクを「避ける」ことではなく、リスクの種類と大きさを理解したうえで、自分の許容範囲内で投資判断を行うことです。
ETFの分配金と税金の仕組み
ETFを保有していると、銘柄によっては定期的に分配金を受け取れます。ただし、分配金の原資や税務上の扱いは投資信託や個別株の配当とは異なる部分があるため、正しく理解しておかないと「思ったより手取りが少ない」という事態になりかねません。ここでは分配金の基本と課税ルールを整理します。
分配金の基本
ETFの分配金は、保有する株式や債券から得られるインカムゲイン(配当金・利息)が原資です。投資信託と異なり、ETFの分配金には売買益(キャピタルゲイン)は含まれない点が特徴となっています。
分配金の支払い頻度は銘柄によって異なり、年1回・2回・4回・6回・12回とさまざまです。分配金を受け取るには「権利確定日」時点でETFを保有している必要があるため、購入前に各銘柄の決算日を確認しておきましょう。
税金の扱い
ETFの売却益(譲渡所得)と分配金には、いずれも20.315%(所得税15.315%+住民税5%)の税率が課されます。これは上場株式と同じ税率です。
確定申告の手間を省きたい場合は、「特定口座(源泉徴収あり)」を選択すれば証券会社が自動で税金を計算・納付してくれます。ただし、複数の口座で損益通算を行いたい場合や、損失の繰越控除を利用したい場合は確定申告が必要になります。
銘柄選びで見るべき5つの指標
ETFを選ぶ際、信託報酬の低さだけに注目するのは不十分です。以下の5つの指標を総合的にチェックしましょう。
| 指標 | 何を見るか | チェックポイント |
|---|---|---|
| ①純資産総額 | ファンドの規模 | 小さすぎる銘柄は繰上償還(運用終了)のリスクがある |
| ②出来高(売買代金) | 流動性の高さ | 多いほどスプレッド(売値と買値の差)が狭く、売買コストを抑えやすい |
| ③信託報酬(経費率) | 保有期間中のコスト | 同じ指数に連動するETFでも運用会社ごとに異なるため比較が必須 |
| ④トラッキングエラー | 指数との連動精度 | 値が小さいほど指数に忠実に連動できている |
| ⑤乖離率 | 市場価格と基準価額の差 | プレミアム(割高)かディスカウント(割安)かを確認する |
初心者の方は「信託報酬が安い順」で比較しがちですが、実務ではそれだけでは不十分です。信託報酬が最安でも純資産総額が極端に小さければ繰上償還のリスクを抱えますし、出来高が少なければスプレッドの広がりで信託報酬の差を簡単に上回るコストが発生します。
特に見落とされやすいのがトラッキングエラーと乖離率の2つです。トラッキングエラーは「運用会社の腕前」を測る指標ともいえ、同じ指数に連動するETFでも数値に差が出ます。乖離率は売買タイミングの判断材料になり、大きなプレミアムがついた状態で購入すると、その後の乖離縮小で価格が下がる可能性があります。
5つの指標を総合的に見て「コストが低く、規模が大きく、指数に忠実で、適正価格で売買できる銘柄」を選ぶのが、ETF選びの王道です。
乖離率の落とし穴
特に海外資産型ETFでは、時差の影響で乖離が大きくなりやすい傾向があります。日本の取引時間中に米国市場は閉まっているため、前日の終値をもとにした基準価額と、リアルタイムの市場価格にズレが生じやすいのです。
「ディスカウントだから安く買えた」と思っても、翌日に基準価額が下方修正されれば実際には割高だったケースもあり得ます。乖離率は各運用会社のウェブサイトで日次公開されているため、売買前に必ず確認する習慣をつけましょう。
「同じ指数」に連動するETFが複数ある場合の選び方
たとえばTOPIX連動型だけでも複数のETFが存在します。信託報酬が同程度であっても、純資産総額・出来高・トラッキングエラー・売買単位が異なるため、実質的なコストやパフォーマンスに差が生じることがあります。
判断に迷ったら、「純資産総額が大きく、出来高が多い銘柄」を選ぶのが基本です。流動性が高い銘柄のほうがスプレッドが狭く、売買しやすいためです。
初心者が検討したい定番ETF銘柄
銘柄選びの基準を押さえたところで、初心者が最初に検討しやすい代表的なETFを資産クラスごとにまとめました。いずれも純資産総額が大きく出来高も多い、いわば「定番」と呼べる銘柄です。
| 資産クラス | 銘柄名 | コード | 連動指数 | 信託報酬(税込) | 決算回数 |
|---|---|---|---|---|---|
| 国内株式(TOPIX) | ダイワ上場投信-トピックス | 1305 | TOPIX | 0.0561% | 年4回 |
| 国内株式(日経225) | NEXT FUNDS 日経225連動型上場投信 | 1321 | 日経平均株価 | 0.10384% | 年1回 |
| 米国株式(S&P500) | MAXIS米国株式(S&P500)上場投信 | 2558 | S&P500 | 0.077% | 年2回 |
| 全世界株式 | MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信 | 2559 | MSCI ACWI | 0.0858% | 年2回 |
| 国内高配当 | NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信 | 1489 | 日経平均高配当株50指数 | 0.308% | 年4回 |
| 国内REIT | NEXT FUNDS 東証REIT指数連動型上場投信 | 1343 | 東証REIT指数 | 0.1705% | 年4回 |
| 金(ゴールド) | 純金上場信託(現物国内保管型) | 1540 | 金価格(1g) | 0.44% | 年6回 |
※信託報酬・決算回数は変更される場合があります。投資の際は最新の目論見書を確認してください。
はじめてETFを購入する場合、まずはTOPIXやS&P500といった主要な株価指数に連動する1銘柄を選び、少額から保有してみるのがよいでしょう。値動きの感覚を掴んでから、高配当やREIT、ゴールドなどを加えて徐々に資産クラスを広げていく進め方が堅実です。
新NISAでETFを活用する方法
2024年に始まった新NISAでは、ETFも投資対象として活用できます。ただし、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」で購入できるETFの範囲が大きく異なる点に注意が必要です。
つみたて投資枠(年間120万円)
つみたて投資枠で購入できるETFは、金融庁が定めた厳格な基準を満たした7銘柄のみに限定されています。TOPIX・日経225・JPX日経400などの国内株式指数と、海外株式指数に連動する銘柄が対象です。
投資信託のつみたて投資枠対象が200本以上あるのに対して、ETFの選択肢は非常に限られています。積立の自動化にも制約があるため、つみたて投資枠ではETFより投資信託を選ぶほうが使い勝手がよいケースが多いでしょう。
成長投資枠(年間240万円)
成長投資枠では、東証に上場するほとんどのETFが投資対象になります。ただし以下の商品は除外されます。
NISAで購入できないETF
- レバレッジ型・インバース型ETF
- 信託期間が20年未満のETF
- 毎月分配型のETF
成長投資枠の非課税保有限度額は1,200万円(生涯投資枠1,800万円のうち)で、売却すれば翌年に枠が復活する仕組みです。スポット購入だけでなく定期積立にも対応しているため、「つみたて投資枠は投資信託で堅実に積み立て、成長投資枠でETFを機動的に売買する」という組み合わせも有効でしょう。
投資目的別の活用例
| 投資目的 | 活用の方向性 |
|---|---|
| 配当収入狙い | 高配当株ETFを成長投資枠で購入し、非課税で分配金を受け取る |
| 長期成長狙い | S&P500やオールカントリー連動型ETFで世界経済の成長を取り込む |
| 短期の機動的売買 | セクター別ETFやテーマ型ETFで、相場の局面に応じた売買を行う |
新NISA口座で受け取るETFの分配金を非課税にするには、「株式数比例配分方式」を選択する必要がある点も忘れずに確認してください。
高配当ETFの仕組みと注意点
上の表で「配当収入狙い」の活用例を紹介しましたが、高配当ETFは新NISAとの相性の良さから個人投資家の間で特に人気が高まっています。ただし「高配当=低リスク」ではない点には注意が必要です。高配当ETFならではの魅力と落とし穴をセットで押さえておきましょう。
高配当ETFの仕組みと注意点
新NISAの成長投資枠で注目を集めているのが高配当ETFです。高配当ETFとは、配当利回りの高い銘柄を中心に構成された指数に連動するETFで、定期的なインカム収入(分配金)を重視する投資家に選ばれています。
高配当ETFの魅力
高配当ETFの魅力は、複数の高配当銘柄への分散投資を1銘柄で実現できる点にあります。個別の高配当株を自分で選ぶ場合、減配や業績悪化のリスクを1社ずつ分析する必要がありますが、ETFであれば指数の構成ルールに従って定期的に銘柄が入れ替わるため、分析の手間を大幅に省けます。
加えて、新NISAの成長投資枠で保有すれば分配金が非課税となり、通常は20.315%かかる税金が免除されます。たとえば年間10万円の分配金を受け取る場合、課税口座なら手取りは約8万円ですが、NISA口座なら10万円をそのまま受け取れる計算です。
利回りの見方
高配当ETFの「分配金利回り」は、過去1年間に支払われた分配金の合計額を現在の基準価額で割った数値です。利回りが3~4%台であれば国内高配当ETFとしては比較的高い水準と考えられます。
ただし、分配金利回りはあくまで過去の実績に基づく数値であり、将来の分配金額を保証するものではありません。株価が下落して見かけ上の利回りが上がっている「高利回りの罠」には十分注意してください。
高配当ETFの注意点
安定したインカムを生み出す高配当ETFですが、以下のような注意点があります。
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- 減配リスク:構成銘柄の業績が悪化し配当が減ると、ETFの分配金も減少します。高配当だった銘柄が翌年に大幅減配するケースは珍しくありません。
- 値上がり益は控えめになりやすい:高配当銘柄は成熟企業が多い傾向にあるため、S&P500のような成長重視の指数と比べるとキャピタルゲイン(値上がり益)は控えめになりがちです。
- セクター偏りのリスク:高配当指数は銀行・保険・商社など特定の業種に構成比率が偏りやすく、そのセクターが不調になるとETF全体が大きく下落する場合があります。
- 分配金の再投資が手動:ETF共通のデメリットですが、分配金は自動再投資されないため、再投資するには手動で購入し直す必要があります。
「高配当=安全」というわけではありません。高配当ETFはポートフォリオの一部にインカム収入の柱として組み込むのが基本であり、これ1本で資産形成を完結させるのではなく、成長株型のETFやインデックス型の投資信託と組み合わせて活用するのが効果的です。
ETFの買い方は5ステップ
ETFを購入するまでの基本的な流れは以下の5ステップです。
ステップ1:証券口座を開設する
ETFは証券会社でのみ購入可能です。手数料の安いネット証券(SBI証券、楽天証券、マネックス証券など)を選ぶとコストを抑えられます。新NISAを利用する場合は、NISA口座の開設も同時に行いましょう。
ステップ2:口座に資金を入金する
銀行振込やインターネットバンキングで証券口座に資金を移します。即時入金に対応している銀行を利用すると、入金後すぐに取引が開始できます。
ステップ3:銘柄を選ぶ
投資したい資産クラス(国内株式・外国株式・債券など)を決め、純資産総額・出来高・信託報酬・乖離率を比較して銘柄を絞り込みます。
ステップ4:注文を出す
銘柄コードを入力し、口数・注文方法(指値 or 成行)を指定して発注します。指値注文は希望価格で買えますが約定しない可能性があり、成行注文は即座に約定しますが想定外の価格になる場合もあります。
ステップ5:約定を確認する
注文が成立したら、取引報告書や保有残高画面で購入内容を確認しましょう。成長投資枠を利用した場合は、年間240万円の枠の消化状況もあわせてチェックしてください。
ETF以外の商品について知りたい場合は、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。
この記事のまとめ
この記事では、ETFの基本構造や種類、投資信託や株式との違い、メリット・リスク、税金や買い方、新NISAでの位置づけまでを整理しました。まずは自身の投資目的やリスク許容度を確認し、ETFが適しているかを見極めたうえで、具体的な商品比較や証券口座での購入方法を検討していきましょう。不安がある場合は、専門家との相談も有効です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
関連する専門用語
赤字国債
国が発行する債券を国債といい、普通国債と財政投融資特別国債(財投債)に区分される。赤字国債(特例国債)は普通国債の一つで、普通国債には他に建設国債がある。赤字国債は、特例国債法に基づいて歳入不足を補うために発行される国債のこと。1965年度に戦後初めて発行され、1975年にも石油危機に端を発した景気低迷への対処で発行、94年度以降は毎年発行され続けている。
アウトパフォーム
アウトパフォームとは、特定の資産や投資対象が、比較対象となる市場指数やベンチマークとされる指標よりも高いリターンを上げることを指す。 例えば、投資信託が日経平均株価やS&P500といった指数よりも高いパフォーマンスを記録した場合、その投資信託はベンチマークをアウトパフォームしたと表現される。投資家やファンドマネージャーにとっては、市場全体の成長率を上回る成果を出すことが重要な目標となり、資産運用の評価基準の一つとして用いられる。
NISA
NISAとは、「少額投資非課税制度(Nippon Individual Saving Account)」の略称で、日本に住む個人が一定額までの投資について、配当金や売却益などにかかる税金が非課税になる制度です。通常、株式や投資信託などで得られる利益には約20%の税金がかかりますが、NISA口座を使えばその税金がかからず、効率的に資産形成を行うことができます。2024年からは新しいNISA制度が始まり、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つを併用できる仕組みとなり、非課税期間も無期限化されました。年間の投資枠や口座の開設先は決められており、原則として1人1口座しか持てません。NISAは投資初心者にも利用しやすい制度として広く普及しており、長期的な資産形成を支援する国の税制優遇措置のひとつです。
企業型確定拠出年金 (企業型DC)
「企業型確定拠出年金(企業型DC:Corporate Defined Contribution Plan)」とは、企業が従業員のために設ける年金制度の一つです。企業が毎月一定額の掛金を拠出し、そのお金を従業員が自分で運用します。運用商品には、投資信託や定期預金などがあり、選び方によって将来の受取額が変わります。 この制度は、老後資金を準備するためのもので、掛金の拠出時に税制優遇があるというメリットがあります。ただし、運用によっては資産が増えることもあれば、減ることもあります。また、個人型確定拠出年金(iDeCo:Individual Defined Contribution Plan)と異なり、掛金は企業が負担します。企業にとっては福利厚生の一環となり、従業員の定着にも役立つ制度です。
iDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称で、老後の資金を作るための私的年金制度です。20歳以上65歳未満の人が加入でき、掛け金は65歳まで拠出可能。60歳まで原則引き出せません。 加入者は毎月の掛け金を決めて積み立て、選んだ金融商品で長期運用し、60歳以降に年金または一時金として受け取ります。加入には金融機関選択、口座開設、申込書類提出などの手続きが必要です。 投資信託や定期預金、生命保険などの金融商品で運用し、税制優遇を受けられます。積立時は掛金が全額所得控除の対象となり、運用時は運用益が非課税、受取時も一定額が非課税になるなどのメリットがあります。 一方で、証券口座と異なり各種手数料がかかること、途中引き出しが原則できない、というデメリットもあります。
パッシブ運用
パッシブ運用とは、投資信託を選ぶ際の運用手法の一つ(対義語:アクティブ運用)。比較のために用いる指標であるベンチマーク(日経平均やNASDAQなど)と同様の動きを目標とする運用手法で、組み入れ銘柄数は多くなる傾向がある。パッシブ運用はアクティブ運用に比べて販売手数料や信託報酬などのコストは安くて済むが、リスクが分散される分、リターンも小さくなるという特徴がある。




