リスク許容度の決め方とは？初心者にもわかりやすい基準と考え方を事例付きでご紹介

資産運用を始めると「リスク許容度」という言葉をよく耳にすると思います。これは、投資でどれだけのリスク（価格変動や損失）を受け入れられるかを示す指標です。

リスク許容度を適切に設定することで、無理なく資産を増やすことができます。しかし、これを間違えると、精神的なストレスが増えたり、途中で投資をやめてしまうことにもつながります。

この記事では、リスク許容度を決めるための5つの視点をわかりやすく解説し、具体的にどう設定すればよいかを紹介します。

リスク許容度を決める5つの視点

リスク許容度を決めるためには、「どれくらいリスクを取れるか？」を判断する基準が必要です。ただし、単純に「リスクを取るのが怖いかどうか」で決めるのはNGです。リスク許容度は、以下の5つの視点から客観的に分析することで、適切な判断ができます。

1. 個人の基本属性
2. 財務状況
3. 投資の時間軸
4. 投資リテラシーと心理
5. 外部環境

それぞれの視点について詳しく解説し、どのようにリスク許容度を決めるべきかを考えていきます。

1. 個人の基本属性

自分の年齢やライフステージ、投資の目的を考えることが大切です。

年齢・ライフステージ

• 若い人は運用期間が長いため、高いリスクを取る余地がある。
• 退職が近い人は、資産を減らさないことが重要。

家族構成

• 独身や共働き夫婦は、生活費の負担が少ないため、比較的リスクを取れる。
• 扶養家族が多い場合は、安定性を重視し、リスクを抑えるべき。

投資目的

• 老後資金：長期運用ができるため、ある程度リスクを取れる。
• 住宅購入資金：数年以内に必要なら、低リスクの運用が望ましい。

個人の基本属性に基づくリスク許容度の決め方のポイント

若くて独身ならリスク資産の割合を増やせるが、扶養家族がいる場合や退職が近い場合はリスクを抑える。

2.財務状況

現在の収入や貯蓄の状況を把握し、生活に影響が出ない範囲でリスクを取ることが重要です。

資産・収入の安定性

• 安定した収入がある人はリスクを取りやすい。
• 収入が不安定な場合は、安全資産を増やすのが無難。

生活費と余裕資金

• 生活費とは別に、余裕資金がどれだけあるかを確認する。
• 余裕資金が多いほどリスクを取りやすい。

債務・ローンの有無

• 住宅ローンや借入が多いと、返済負担があるためリスクを抑えるべき。

財務状況に基づくリスク許容度の決め方のポイント

まず、生活費を確保し、投資に回せる余裕資金を把握する。ローンが多い人はリスクを低めにするのが基本。

3. 投資の時間軸

いつまでに資金が必要かを考えることで、リスクの取り方が決まります。

投資期間

• 10年以上運用できる場合は、短期的な値動きに耐えられるため、リスクを取りやすい。
• 1～3年以内に必要な資金なら、安全資産（債券・預金）を中心にする。

流動性（換金性）への要求

• すぐに引き出す予定がある資金は、リスク資産に回さない。
• 使う予定のない資金は、長期投資に回せる。

投資の時間軸に基づくリスク許容度の決め方のポイント

短期で使うお金は低リスク運用、長期で運用できるお金は高リスク資産も活用可能。

4.投資リテラシーと心理

自分の投資経験や精神的な許容範囲を知ることが大切です。

過去の投資経験

• 初心者はリスクを抑えた投資からスタートするのが安全。
• 経験者はリスクの取り方を理解しているため、高リスク運用も可能。

メンタル・性格

• 値動きに対するストレス耐性がある人はリスクを取りやすい。
• 少しの損失でも不安になるなら、低リスク運用が向いている。

投資に対する知識・理解度

• 知識があれば、リスクを冷静に判断できる。
• 知識がないと、不安や感情的な判断をしやすい。

投資リテラシーと心理に基づくリスク許容度の決め方のポイント

投資経験が少ない人は、まずは低リスク資産で運用し、慣れたらリスク資産の割合を増やす。

5.外部環境

市場の動向やインフレを考慮し、リスクを調整することが必要です。

経済環境・市場状況

• 不況時はリスクを抑え、景気回復時はリスク資産を増やす判断も。

インフレ耐性

• インフレが進むと、現金や低リスク資産の価値が目減りする。
• 株式などのリスク資産を持つことで、インフレ対策ができる。

外部環境に基づくリスク許容度の決め方のポイント

経済状況を考慮し、インフレリスクを意識した資産配分を検討する。

リスク許容度の設定方法の具体例

「リスク許容度を決める5つの視点」は理解できたものの、実際にどうやって自分のリスク許容度を決めればいいのか？と悩む人も多いでしょう。

そこで、この章では具体的な事例をもとに、リスク許容度の決定プロセスを説明します。例ごとに異なる条件を設定し、「個人の基本属性」「財務状況」「投資の時間軸」「投資リテラシーと心理」「外部環境」の視点をそれぞれ考慮しながら、最適なリスク許容度を設定します。

5つの視点を組み合わせながらリスク許容度を判断する流れを解説します。

自分の状況に近い例を参考にしながら、適切なリスク設定を考えてみましょう！

例1：30歳・独身・投資経験なし（リスク許容度：低め）

【状況】 年収：500万円 貯金：300万円（うち100万円を投資予定） 投資目的：老後資金 運用期間：30年以上 リスク耐性：低め（大きな損失は避けたい）

【リスク許容度の決定ポイント】 基本属性： 独身・30歳でライフステージの変化が少ないため、運用期間が長い 投資の時間軸： 老後資金のため、短期の値動きにこだわる必要がない 投資リテラシーと心理： 投資経験がないため、価格変動のストレスを軽減する必要がある

【設定方法】 生活防衛資金として200万円を確保し、投資は100万円 低リスク資産（債券・投資信託）70%、高リスク資産（株式）30% まずは少額で始め、投資経験を積んでリスク耐性を高める

例2：45歳・子ども2人・投資経験あり（リスク許容度：中程度）

【状況】 年収：800万円 貯金：800万円（うち300万円を投資予定） 投資目的：老後資金＋教育資金 運用期間：老後資金は20年以上、教育資金は10年以内 リスク耐性：中程度（バランス重視）

【リスク許容度の決定ポイント】 財務状況： 年収・貯蓄が安定しており、投資に回せる資金が確保されている 投資の時間軸： 教育資金（10年以内）は低リスク、老後資金（20年以上）は高リスクで運用可能

【設定方法】 教育資金として100万円は低リスク運用（債券・預金）で確保 老後資金として200万円は高リスク資産（株式・投資信託）で運用 市場環境を見ながら、年に1回ポートフォリオを見直す

例3：55歳・退職まであと10年・資産を守りたい（リスク許容度：低め）

【状況】 年収：900万円 貯金：1,500万円（うち500万円を投資予定） 投資目的：老後資金 運用期間：10年 リスク耐性：低め（資産を減らしたくない）

【リスク許容度の決定ポイント】 基本属性： 退職が近づいており、大きなリスクは避けたい 投資の時間軸： 10年以内に使う可能性があるため、大きな値動きがある資産は抑える

【設定方法】 株式の割合は30%に抑え、低リスク資産（債券・定期預金）を70%確保 定期的に資産配分を見直し、リスクを抑えながら運用

例4：40歳・共働き・投資経験あり（リスク許容度：高め）

【状況】 年収：夫婦合計で1,500万円 貯金：1,000万円（うち500万円を投資予定） 投資目的：資産形成（特に決まった使い道なし） 運用期間：20年以上 リスク耐性：高め（長期目線で運用可能）

【リスク許容度の決定ポイント】 財務状況： 収入が安定しており、生活費とは別に投資できる資金がある 投資リテラシーと心理： 過去の投資経験があり、リスク許容度が高い

【設定方法】 長期的に資産を増やすため、高リスク資産（株式・海外ETF）を80%、債券・預金を20% 短期的な市場の動きに影響されず、積立投資でコツコツ運用

まとめ

リスク許容度を決めるには、自分のライフステージ、財務状況、運用期間、経験、外部環境を考慮することが大切です。 自分の状況に合ったリスクの取り方を理解し、無理なく資産運用を進めましょう！