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安全資産とリスク資産の違いとは?リスク・リターンや資産配分の考え方の基本を徹底解説

安全資産とリスク資産の違いとは?リスク・リターンや資産配分の考え方の基本を徹底解説

安全資産とリスク資産の違いとは?リスク・リターンや資産配分の考え方の基本を徹底解説

執筆者:

公開:

2024.04.05

更新:

2025.12.10

ポートフォリオ運用リスク管理資産寿命

資産運用に興味はあっても「損をするのが怖い」「現金と投資の割合が決められない」と悩む人は少なくありません。誤った商品選びや、配分を決めないまま投資を始めると、値下がり時に不安が大きくなり途中で続けられなくなるリスクがあります。

本記事では、安全資産とリスク資産の違い、生活防衛資金の考え方、年代別の資産配分、インデックス投資やオルカンを使った分散手法まで整理し、自分に合ったリスク水準を見極めるための基礎を解説します。

サクッとわかる!簡単要約

この記事では、安全資産とリスク資産の違い、生活防衛資金の考え方、「120−年齢」による資産配分の目安、分散投資やオルカンを使った実践方法まで体系的に理解できます。

読了後は、自分に合った投資と現金の割合を判断でき、年代に応じた配分調整やリバランスの進め方まで具体的に行動に落とし込めるようになります。

目次

資産運用のリスクとリターンの基本を簡単にわかりやすく解説

投資リターンとは?利益の2大源泉を把握する

リスクとは何か?価格変動幅で捉える考え方

資産の価格を変動させる6つの代表的リスクとは?

価格変動リスク:市場の上げ下げに備える

信用リスク:発行体の破綻が及ぼす影響

流動性リスク:売りたいときに売れない不利益

金利変動リスク:金利上昇で債券価格が下がる仕組み

為替変動リスク:通貨レートがリターンを左右する

カントリーリスク:政治・経済情勢が資産に及ぼす影響

資産の流動性とは?現金化しやすさが安心感を左右する

インカムゲインとキャピタルゲインで利回りを測る

インカムゲイン:資産を保有している時に得られる収益

キャピタルゲイン:資産の売買によって得られる収益

トータルリターンと利回りの計算方法

ハイリスク・ハイリターンとローリスク・ローリターンの違いとは?

資産クラス別リスク・リターンマップで全体像を掴む

安全資産とリスク資産の特徴を比較する

安全資産のメリットと限界

リスク資産の伸びしろと注意点

投資と現金の黄金比率:生活防衛資金と年齢から配分を決める手順

「守りの安全資産」と「攻めのリスク資産」を組み合わせてインフレに勝つ

投資の前に「生活費の半年〜1年分」を現金で確保する

投資比率の目安は「100-年齢」%:若いうちはリスクを多めに

「積極型・標準型・安定型」から自分が安眠できる配分を選ぶ

適切な資産配分を決める4つの視点

1.年齢・運用期間で変わる比率目安

2.総資産と生活防衛資金のバランス

3.収入安定度と将来支出の見通し

4.リスク許容度を自己チェック

年代別の資産配分の目安(20代〜60代)

20代:貯金と投資の割合は「続けられる」範囲で

30代:住宅・教育費を見据えた現金比率

40代:家計イベントを織り込みながらリスク資産を調整

50代以降:取り崩しを見据えた「守り」を厚くする配分

リスク許容度とは?自分の損失許容ラインを知る

リスクを抑える3つの運用践手法

分散投資でリスクを平均化する

リバランスで資産配分を維持する

ヘッジ取引で特定リスクを限定する

インデックス投資・オルカンで実現する分散ポートフォリオ

インデックス投資が資産配分と相性の良い理由

オルカンのリスク・リターンとポートフォリオ内での位置づけ

投資信託の標準偏差やリスク指標の読み方

高利回り商品の現実的な位置づけと付き合い方

高利回りの広には要注意

ハイリスク投資は「ポートフォリオの一部」にとどめる

資産運用のリスクとリターンの基本を簡単にわかりやすく解説

資産運用を始める際、「リスク」と「リターン」という言葉をよく耳にするでしょう。これらは投資において非常に重要な概念ですが、初心者の方にとっては難しく感じられるかもしれません。この記事では、リスクとリターンの基本的な考え方から、ご自身の資産運用にどう活かすかまでをわかりやすく解説します。

投資におけるリスクとリターンは、資産運用の成果を測る上で欠かせない両輪です。ここでは、それぞれの基本的な意味合いと、両者の関係性について確認しましょう。

投資リターンとは?利益の2大源泉を把握する

投資におけるリターンとは、投資によって得られる利益全般を指します。例えば、株式の値上がり益(キャピタルゲイン)や配当、債券の利息、不動産の家賃収入などがこれに該当します。

リスクとは何か?価格変動幅で捉える考え方

一方、リスクとは「損をする危険性」だけを意味するわけではありません。投資においては、リターンの「振れ幅の大きさ」や「不確実性」を指します。つまり、実際のリターンが予想からどれくらい上下にブレる可能性があるかを示す指標です。リスクが大きい資産ほど、予想よりも大きく上振れ・下振れする可能性が高いと言えます。

「リスク」は「良い方にも悪い方にも予想外に振れる可能性」を指す点に注意が必要です。一般的に、高いリターンを期待するためには高いリスクを取る必要があるという密接な関係があります。重要なのは、このリスクを正しく理解し、ご自身の許容範囲内でコントロールしながら投資を行うことです。

資産の価格を変動させる6つの代表的リスクとは?

一口にリスクと言っても、その要因や現れ方によってさまざまな種類があります。投資において代表的なリスクは主に以下の6種類です。それぞれの内容と具体例を見ていきましょう。

価格変動リスク:市場の上げ下げに備える

価格変動リスク(マーケットリスク)とは、景気動向や企業業績、政治・社会情勢などの影響で、株式や債券などの価格が変動するリスクです。経済状況の悪化や企業の業績低迷で株価が下落する可能性もあれば、好材料で急騰することもあり得ます。

信用リスク:発行体の破綻が及ぼす影響

信用リスク(デフォルトリスク)とは、国や企業の信用力に関わるリスクで、債務不履行(デフォルト)に陥る可能性を指します。発行元が財政破綻すれば、利息や元本の支払いが滞り損失を被る恐れがあります。

流動性リスク:売りたいときに売れない不利益

流動性リスクとは、資産を現金化しやすいか(流動性)の観点から捉えたリスクです。流動性が低い資産は、売却して現金に換えるまでに時間がかかったり、不利な価格を受け入れたりする可能性があります。不動産などが代表例です。

金利変動リスク:金利上昇で債券価格が下がる仕組み

金利変動リスクとは、金利の変動が資産価格に及ぼすリスクです。特に債券は市場金利と逆方向に価格が変動する性質があります。金利上昇局面では、すでに発行された債券の価格は下落します。

為替変動リスク:通貨レートがリターンを左右する

為替変動リスクとは、通貨の為替レートの変動によるリスクです。海外資産に投資する場合、現地通貨建ての資産価値が変わらなくても、為替レートの変化により円換算の価値が増減します。外貨預金や海外株式・債券、外国投信など、外貨建て資産全般に付きまといます。

カントリーリスク:政治・経済情勢が資産に及ぼす影響

カントリーリスクとは、海外の国や地域に投資する際に発生しうる、その国特有のリスク全般を指します。具体的には、政情不安によるクーデターや紛争、急激なインフレ、法律・規制の変更、通貨の急落、自然災害などが挙げられます。これらの要因によって、投資した資産の価値が減少したり、回収が困難になったりする可能性があります。投資の分散先を選ぶ際には、このカントリーリスクも考慮することが重要です。

資産の流動性とは?現金化しやすさが安心感を左右する

流動性とは「欲しい時にすぐ現金に戻せるか」という尺度です。例えば上場株式や投資信託は数日で現金化できますが、不動産は売却に数ヶ月かかることもあります。人生には病気や失業など急な出費が必要な場面があります。リスクやリターンだけでなく、いざという時に生活を守れるよう、流動性の高い資産(現金等)を一定割合確保しておくことが心の安定につながります。

インカムゲインとキャピタルゲインで利回りを測る

リターンは、投資から得られる利益のことを指します。リターンには「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」の2種類があり、これらを総合的に見ることで運用の成果を測ります。

インカムゲイン:資産を保有している時に得られる収益

インカムゲインは、資産を保有しているときに得られる収益のことで、配当金や利息がこれに該当します。

資産の種類  インカムゲイン
株式配当金:株式を保有することで受け取れる利益の一部分配金
債券利息(クーポン):債券の保有者に対して支払われる利息収入
不動産賃料収入:不動産を賃貸した際に得られる家賃収入
投資信託分配金:ファンドが得た収益から支払われる分配金
預金・ローン利息収入:銀行への預金や個人向け貸付から得られる利息収入

キャピタルゲイン:資産の売買によって得られる収益

キャピタルゲインは、資産の売買よって得られる収益です。例えば株式を低価格で購入し、高価格で売却した場合にはキャピタルゲインが得られます。反対に、株式を高価格で購入し、低価格で売却した場合にはキャピタルロスが発生したことになります。

トータルリターンと利回りの計算方法

資産運用におけるリターンは、運用額からどのくらい利益を生み出したか、という割合で考えます。これを利回りといいます。

インカムゲインとキャピタルゲインを単純に足し合わせたものがトータルリターンです。トータルリターンを運用額で割ることで、運用の利回りが算出できます。

例えば、100万円の運用で年間5万円の配当収入(インカムゲイン)と、3年後に120万円で売却した際の20万円の売却益(キャピタルゲイン)があった場合、トータルリターンは35万円(5万円×3年+20万円)となります。

この場合の年間平均利回りは約11.7%です。

35万円/100万円 ÷ 3年×100≈11.67%

このように、インカムゲインとキャピタルゲインを合わせることで、資産運用におけるリターンを評価していきます。

ハイリスク・ハイリターンとローリスク・ローリターンの違いとは?

「ハイリスク・ハイリターン」と「ローリスク・ローリターン」という言葉の通り、リスク(不確実性の大きさ)とリターン(期待収益)の大小には表裏一体の関係があります。一般的に値動きの幅が大きい資産ほど期待できるリターンも大きく、値動きが安定している資産ほど得られるリターンも小さい傾向があります。これは投資の世界の基本原則の一つであり、投資商品選びの際にも常に意識すべきポイントです。

資産クラス別リスク・リターンマップで全体像を掴む

資産クラスごとのリスク・リターンの関係を説明した図です。預貯金や債券はローリスク・ローリターン、暗号通貨等はハイリスク・ハイリターンです。ローリスク・ハイリターンのような都合の良い資産はありません。 資産クラスごとのリスク・リターンの関係を説明した図です。預貯金や債券はローリスク・ローリターン、暗号通貨等はハイリスク・ハイリターンです。ローリスク・ハイリターンのような都合の良い資産はありません。

これは資産クラスごとのリスク・リターンの関係を説明した図です。預貯金や債券はローリスク・ローリターン、暗号通貨等はハイリスク・ハイリターンです。ローリスク・ハイリターンのような都合の良い資産はありません。

資産クラスの種類や特徴については以下記事で詳しく説明しています。

例えば預貯金は元本が保証されている代わりに増える利息もごくわずか(低リスク・低リターン)、債券は預貯金より少しリスクもリターンも高め、株式は価格変動が大きい分だけ高い収益も狙える(高リスク・高リターン)といった位置づけになります。このように、高い利益を得ようとすればそれだけ大きなリスクを取る必要があり、リスクを極力抑えればリターンも小さくなるのが基本的な市場のメカニズムです。

重要なのは、ご自身が望むリターンと取れるリスクのバランスを見極めることです。闇雲に「ハイリターンだから」と高リスク商品に飛びつくと、値下がりに耐えられず途中で投げ出してしまう恐れがあります。一方でリスクを嫌いすぎて安全資産ばかりでは、インフレや機会損失で資産価値が目減りしてしまうかもしれません。資産運用ではリスクとリターンのバランス感覚が重要であり、「自分はどの程度のリスクなら受け入れられるか」「目標とするリターンにはどれくらいのリスクが必要か」を冷静に考えて投資対象を選ぶ必要があります。

安全資産とリスク資産の特徴を比較する

資産運用を考える際には、手元の資産を大きく「リスク資産」と「安全資産」(無リスク資産)に区別して捉えることが重要です。リスク資産とは、価格変動リスクを伴い、元本が保証されていない資産のことです。一方、安全資産とは、元本割れの可能性が極めて低く、価格変動がほとんどない資産を指します。典型的な安全資産は現金預金や日本国債などで、預けておけば額面上はほぼ確実に元本が維持されます(預金保険制度の範囲内や国がデフォルトしない限り)。

逆に株式・投資信託・社債・外貨建て商品・不動産といったものは、元本が変動しうるためリスク資産に分類されます。

安全資産のメリットと限界

安全資産は元本が守られている安心感がある反面、リターンは小さく抑えられる傾向があります。特に昨今の日本は超低金利ですから、預貯金や日本国債といった安全資産の利回りはごくわずかで、資産を大きく増やすことはできません。

リスク資産の伸びしろと注意点

一方のリスク資産は価格変動リスクこそありますが、長期的にはインフレを上回るリターンや安全資産以上の収益を得られる可能性があります。このリスク資産と安全資産のトレードオフ(安全性と収益性のバランス)が資産運用の根幹です。大切なのは、各個人の目的や状況に応じて「安全資産とリスク資産をどの比率で保有するか」を決めることです。

例えば、資産をとにかく減らしたくない元本確保重視の方は安全資産を多めに配分し、一方で資産を積極的に増やしたい方はリスク資産割合を高めにする、という具合です。ただし、リスク資産の比率を上げれば上げるほどポートフォリオ全体の価格変動も大きくなる(評価額が日々上下に振れる)点には留意が必要です。

あなたに合った金融商品を選ぶにあたり、こちらの記事も参考にしてみてください。

投資と現金の黄金比率:生活防衛資金と年齢から配分を決める手順

投資で最も重要なのは「いくら投資するか」という配分決定です。すべてを投資に回すのではなく、守りの「安全資産」と攻めの「リスク資産」をどう組み合わせるかが成功の鍵を握ります。ここでは、まず確保すべき現金の額と、年齢や目的に合わせた無理のない配分ルールの目安を解説します。

「守りの安全資産」と「攻めのリスク資産」を組み合わせてインフレに勝つ

資産は、元本保証で減らない「安全資産(預貯金・国債)」と、値動きはあるが成長が期待できる「リスク資産(株式・投資信託)」の2つに分類されます。 日本人は安全資産を好む傾向にありますが、超低金利や物価上昇が続く現在、現金だけでは資産価値が実質的に目減りしてしまいます。現預金で守りを固めつつ、リスク資産を取り入れてお金を働かせることこそが、資産寿命を延ばすための必須条件です。

投資の前に「生活費の半年〜1年分」を現金で確保する

投資はあくまで「当面使わない余剰資金」で行うのが鉄則です。スタートする前に、病気や失業などの緊急事態に備え、生活費の6ヶ月から1年分を「生活防衛資金」として預貯金で確保しましょう。 この手元の現金が心の安定剤となり、万が一市場が暴落しても、生活のために資産を安値で売却するという最悪の事態を防げます。「使うお金」をしっかり確保してこそ、安心して「増やすお金」を運用できるのです。

生活防衛資金については以下記事で詳しく解説しています。

投資比率の目安は「100-年齢」%:若いうちはリスクを多めに

生活防衛資金を除いたお金をどう配分するか。基本のセオリーは「100-年齢 = 投資(リスク資産)の割合」です。例えば30歳なら70%、60歳なら40%を投資に回します。 若いほど運用期間を長く取れるためリスク許容度が高く、年齢が上がると守りを重視すべきだからです。最近は長寿化で「120-年齢」とする考え方もありますが、まずは少額から始め、自分の性格に合った心地よい比率へ徐々に調整していくのが賢明です。

「積極型・標準型・安定型」から自分が安眠できる配分を選ぶ

代表的なポートフォリオの型を知っておくと配分がスムーズです。リターン重視の「積極型(株式80%・現金20%)」、バランスの「標準型(株式50%・債券30%・現金20%)」、守り重視の「安定型(株式30%・債券50%・現金20%)」などが目安となります。 株式が多いほど増える可能性も減る可能性も高まります。暴落時でも夜ぐっすり眠れるのはどの配分か、自分のリスク許容度と照らし合わせて選んでみましょう。

適切な資産配分を決める4つの視点

では具体的に、リスク資産と安全資産の適切な割合はどう決めれば良いのでしょうか。残念ながら万人に当てはまる正解はありませんが、目安となる考え方はいくつか存在します。リスク資産割合を決める際は、年齢以外にもさまざまな個人要因を考慮し、ご自身に合ったリスク資産と安全資産の割合(アセットアロケーション)を決定することが重要です。以下の4つの視点が参考になります。

1.年齢・運用期間で変わる比率目安

一つの目安は年齢に応じた資産配分です。一般的に若いほど収入獲得期間が長く、多少の損失から挽回できるためリスク資産割合を高めに、老後が近づくほど安全資産割合を増やし保全重視にするといった考え方があります。

具体的な指標として「120-年齢=リスク資産割合(%)」という経験則があります。例えば40歳ならば「120-40=80」で、資産の約80%をリスク資産、20%を安全資産に振り向けるイメージです。ただし、これはあくまで機械的な目安に過ぎない点には注意が必要です。

また、投資目的や運用期間も重要な要素です。資金をいつ使う予定か、運用期間はどの程度かによって、許容できるリスクの度合いが変わります。使うまでの期間が長い資金ほど一時的な評価損にも耐えやすいため、リスク資産比率を高めにできます。

2.総資産と生活防衛資金のバランス

総資産額と、その中で投資に回す余裕資金の割合も考慮すべき点です。投資に回す金額がご自身の総資産に占める割合が高い人ほど、ポートフォリオ全体の安定性(守り)を重視すべきです。また、年齢に応じた機械的なリスク資産割合の目安を参考にする場合でも、まず生活防衛資金(当面の生活費や緊急予備資金)を確保した上で、残りの資金で資産配分を考えることが重要です。

3.収入安定度と将来支出の見通し

将来の収入見通しや家計の安定性も資産配分に影響します。収入が安定しており、将来の大きな支出予定がある程度見えている人は、心理的・経済的に多少リスクを取った運用がしやすい傾向があります。

4.リスク許容度を自己チェック

最後に、最も重要なのが個々人の性格や投資経験による心理的なリスク許容度です。どれだけ理論的に適切な配分でも、価格変動に不安を感じて続けられないようでは意味がありません。無理なく続けられる範囲でリスク資産を配分することが大切です。

以上の観点を総合して、ご自身に合ったリスク資産と安全資産の割合を決定すると良いでしょう。正解は人それぞれですので、他人の例に惑わされず「自分の場合はどうか?」と考えることが大切です。そして一度決めた資産配分も、市場環境やライフステージの変化に応じて柔軟に見直す姿勢も持ちましょう。

年代別の資産配分の目安(20代〜60代)

運用期間が長い若年層は、リスクを取って資産を大きく増やす「攻め」の時期です。一方、リタイアが近づくにつれて、築いた資産を減らさない「守り」の比重を高める必要があります。ここではライフステージの変化に合わせて、徐々に安全資産の割合を増やしていく理想的なバランス変化(グライドパス)について解説します。

20代:貯金と投資の割合は「続けられる」範囲で

20代最大の武器は「時間」です。今後何十年も運用を続けられるため、一時的な暴落があっても回復を待つことができます。まずは生活防衛資金を確保した上で、現金比率を20%程度に抑え、資産の約8割を投資に回す積極的な運用も選択肢に入ります。

この時期は、少額からでも「投資習慣」を作ることが最優先です。NISAのつみたて枠などをフル活用して将来のためのコア資産を作りつつ、余裕があればリスクの高いサテライト投資に挑戦するなど、経験を積むのにも適した時期です。

30代:住宅・教育費を見据えた現金比率

30代は結婚、出産、住宅購入など、まとまった現金が必要になるライフイベントが増える時期です。いざという時に「株が下がっていて売れない」という事態を避けるため、20代よりも安全資産の比率を高め、現金比率を25〜30%程度確保しておくと安心です。

一方で、老後まではまだ十分な時間があります。手元の流動性を確保しつつ、残りの7割は引き続き投資に回し、家計の負担にならない範囲で資産の成長を狙いましょう。

40代:家計イベントを織り込みながらリスク資産を調整

収入が増えて安定する一方で、子どもの教育費や住宅ローンなどの支出もピークを迎えます。教育資金確保のために現金を厚めに持ちつつ、同時に自分たちの老後資金作りもラストスパートに入る難しい時期です。

現金比率を35〜40%程度まで引き上げて足元の家計を固めつつ、残りの6割で長期投資を継続するのが一つの目安です。大きな失敗が怖くなる時期だからこそ、守りと攻めのバランスを慎重にコントロールしましょう。

50代以降:取り崩しを見据えた「守り」を厚くする配分

定年退職が視野に入り、資産運用における「仕上げ」の段階に入ります。ここでの最優先事項は、暴落直後に資産を取り崩して寿命を縮めてしまう「順序のリスク」を避けることです。

50代では現金比率を45〜50%へ、60代以降は50〜60%へと徐々に高めていきましょう。株式の比率を下げ、債券などを活用してポートフォリオ全体の値動きをマイルドにすることで、「大きく増やせなくても、大きく減らさない」安定運用へとシフトします。

リスク許容度とは?自分の損失許容ラインを知る

リスク許容度とは「自分自身が許容できるリスクの範囲(どの程度の損失や変動なら受け入れられるか)」のことです。資産運用を続けていく上で、評価額の一時的な値下がりに対してどこまで心理的に耐えられるか、ご自身の損失許容ラインを把握しておくことは非常に重要です。リスク許容度は人それぞれ異なります。これは主に以下の要因で決まります。

  • 経済的な余裕度:
    総資産や収入、今後の支出予定など経済状況が許容度に影響します。
  • 投資経験と知識:
    経験豊富で相場変動に慣れている人や金融知識がある人は、初心者より冷静に変動を受け止められる傾向があります。
  • 性格や心理的傾向:
    リスクに対する感じ方は性格によっても異なります。

リスク許容度についてより詳しくは以下の記事で解説しています。

リスクを抑える3つの運用践手法

ここまで見てきたように、リスクは投資の成果と切り離せないものですが、工夫次第でコントロールや低減が可能です。資産運用の実践において、代表的なリスク管理手法として「分散投資」「リバランス」「ヘッジ」の3つが挙げられます。これらを上手に活用することで、期待リターンを大きく損なわずにリスクだけを抑えたり、ご自身の許容範囲内にリスク量を調整したりすることができます。

分散投資でリスクを平均化する

分散投資とは「卵を一つのカゴに盛るな」という格言に象徴される手法です。資産を複数の異なる対象に分けて投じることで、特定の要因による損失を局限する狙いがあります。分散の切り口はいくつかあり、典型例として以下の3つが挙げられます。

  • 資産の分散(株式、債券、現金、不動産など異なる資産クラスに配分)
  • 地域の分散(国内資産と海外資産、新興国と先進国など複数の国・通貨に分ける)
  • 時間の分散(一度にまとめて投資せず積立投資などで購入時期を分散する)

分散投資によって一部の資産が急落しても他の資産の値上がりや安定がそれを補い、ポートフォリオ全体の変動を小さく抑えることが期待できます。ただし分散すればリスクがゼロになるわけではなく、あくまで「リスクを平均化して尖った損失を避ける」手段と捉えると良いでしょう。

ポートフォリオ管理や分散投資についての詳しい説明と資産管理アプリを使った効率化については以下記事をご参照ください。

リバランスで資産配分を維持する

リバランスとは資産配分の定期調整のことです。運用を続けていると市場変動により、当初決めた資産配分比率が崩れてきます。例えば当初株式50:債券50で始めたポートフォリオでも、株式市場の上昇で株の評価額が増えればいつの間にか株式60:債券40といった具合に比率が変わってしまいます。そこで一定期間ごと(例:年に1回)や比率乖離が一定幅を超えたときに、資産を売買して元の目標配分に戻す作業を行います。これがリバランスです。

リバランスをすることで、膨らみ過ぎたリスク資産比率を意図した水準に引き下げ、ポートフォリオ全体のリスクをコントロールできます。また高くなり過ぎた資産を売り、低くなった資産を買い増すプロセスは「安く買って高く売る」ことにもつながり、長期的な資産成長に寄与し得ます。リバランス自体の手法は難しくなく、目標より比率が上振れた資産を一部売却し、下振れた資産を買い増すだけです。

ヘッジ取引で特定リスクを限定する

ヘッジとは特定のリスク要因を打ち消すために取る対策の総称です。金融の文脈では、ある資産のリスクを相殺するために逆相関の資産や金融取引を組み合わせることを指します。例えば為替ヘッジは、外貨建て資産を保有する際に為替変動による損益を打ち消すために為替予約や通貨スワップなどを活用する方法です。これらはやや上級者向けの手法ですが、リスクヘッジ全般の考え方としては「将来起こり得るリスクに備え、損失を回避または最小化するための対策」だと理解しておきましょう。ヘッジにはコストが伴ったり、ヘッジを完璧に行うとリターンも限定されてしまうジレンマもあります。

インデックス投資・オルカンで実現する分散ポートフォリオ

資産配分(アセットアロケーション)を決めた後、具体的に何を買えばよいか迷ったら「インデックスファンド」が最適解です。特に「全世界株式(オルカン)」などの広範な指数に連動する商品は、1本で究極の分散投資を低コストで実現できます。ここでは、資産運用の王道とされるインデックス投資のメリットと、リスク指標の正しい読み方を解説します。

インデックス投資特有のリスクについては以下Q&Aでも説明しています。

インデックス投資が資産配分と相性の良い理由

インデックス投資とは、日経平均やS&P500などの市場平均指数に連動する成果を目指すシンプルな投資手法です。銘柄選びや売買のタイミングをプロに任せられるため、専門知識がなくてもすぐに始められます。

最大のメリットは、少額で圧倒的な分散効果が得られる点です。個人で数千社の株を買い集めるのは不可能ですが、インデックスファンドなら1本買うだけで、擬似的に市場全体へ投資したのと同じ状態を作れます。特定の企業が倒産しても全体への影響は軽微で済むため、長期的な資産形成の土台(コア資産)として最適です。

オルカンのリスク・リターンとポートフォリオ内での位置づけ

「オルカン」の愛称で親しまれる「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」などは、これ1本で日本を含む先進国から新興国まで約50カ国、約3,000銘柄に分散投資できる商品です。

構成比率は米国の巨大企業を中心に、世界の時価総額に合わせて自動調整されます。世界経済が成長する限り、その恩恵を丸ごと享受できるのが強みです。特定の国や地域に依存するリスクを排除できるため、リスク資産の中核として「とりあえずこれを積み立てておく」という使い方が適しています。

オルカンをはじめとした有名インデックスの特徴や選び方は以下記事で詳しく解説しています。

投資信託の標準偏差やリスク指標の読み方

投資信託の説明書にある「標準偏差」という数値は、リターンの振れ幅(リスクの大きさ)を表しています。難しく考えず「数値が大きいほど値動きが激しい」と理解しましょう。

例えば「期待リターン3%、標準偏差10%」の場合、統計的には約7割の確率で「プラス13%からマイナス7%」の範囲に収まることを意味します。商品を選ぶ際は、リターン(儲け)の大きさだけでなく、この標準偏差(振れ幅)を見て、自分が耐えられる値動きかどうかを確認することが大切です。

高利回り商品の現実的な位置づけと付き合い方

「利回り◯%」という数字の高さは魅力的ですが、投資の世界に「ローリスク・ハイリターン」は存在しません。高いリターンの裏には、必ず相応のリスクや複雑な仕組みが隠されています。広告の甘い言葉に惑わされず、高利回り商品の実態を正しく理解し、ポートフォリオ全体の中で「お楽しみ枠」として適切に扱うためのルールを整理します。

高利回りの広には要注意

「年利◯%保証」「元本確保で高配当」といった広告を見たら、まずは警戒してください。リターンが高いということは、それだけ価格変動が激しいか、発行体の信用度が低い(倒産リスクがある)ことの裏返しです。

例えば、毎月高い分配金が出る投資信託でも、実は運用の利益ではなく、預けた元本を取り崩して支払われているケース(タコ足配当)が少なくありません。表面的な利回りの高さだけで飛びつくと、気づいた時には資産が大きく減っていたという事態になりかねないため、中身の精査が必要です。

ハイリスク投資は「ポートフォリオの一部」にとどめる

高利回り商品や個別株などのハイリスク投資を全否定するわけではありませんが、あくまで「サテライト(脇役)」として扱うのが鉄則です。

資産全体の7〜9割はインデックスファンドなどの堅実な「コア資産」で守りを固め、残りの1〜3割の資金で高利回りを狙う「コア・サテライト戦略」を推奨します。この配分なら、仮にサテライト部分で失敗しても生活基盤は揺らぎません。「最悪ゼロになっても生活に困らない余裕資金」の範囲内で楽しむことが、長く相場と付き合う秘訣です。

この記事のまとめ

この記事では、安全資産とリスク資産の役割、生活防衛資金の考え方、「120−年齢」を目安にした資産配分、インデックス投資やオルカンを使った分散方法、年代別の比率調整、リバランスの意義を整理しました。まずは現在の資産構成を書き出し、現金比率とリスク資産割合が自分の許容度と目的に合っているかを確認してみてください。

そのうえで、生活防衛資金の確保、毎月の積立設定、年1回の配分見直しなど具体的な行動に落とし込むと長期運用が安定します。不安が残る場合は、専門家に相談しながら方針を固めることで、より安心して資産形成を進められます。

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アセットアロケーション(資産配分)

アセットアロケーション(Asset allocation)とは、資産配分という意味で、資金を複数のアセットクラス(資産グループ)に投資することで、投資リスクを分散しながらリターンを獲得するための資産運用方法。アセットアロケーションは戦略的アセットアロケーションと戦術的アセットアロケーションの2つを組み合わせることで行われ、前者は中長期的に投資目的・リスク許容度・投資機関に基づいて資産配分を決定し、後者は短期的に投資対象の資産特性に基づいて資産配分を決定する。

為替リスク

為替リスクとは、異なる通貨間での為替レートの変動により、外貨建て資産の価値が変動し、損失が生じる可能性のあるリスクを指します。 たとえば、日本円で生活している投資家が米ドル建ての株式や債券に投資した場合、最終的なリターンは円とドルの為替レートに大きく左右されます。仮に投資先の価格が変わらなくても、円高が進むと、日本円に換算した際の資産価値が目減りしてしまうことがあります。反対に、円安が進めば、為替差益によって収益が増える場合もあります。 為替リスクは、外国株式、外貨建て債券、海外不動産、グローバルファンドなど、外貨に関わるすべての資産に存在する基本的なリスクです。 対策としては、為替ヘッジ付きの商品を選ぶ、複数の通貨や地域に分散して投資する、長期的な視点で資産を保有するなどの方法があります。海外資産に投資する際は、リターンだけでなく、為替リスクの存在も十分に理解しておくことが大切です。

インカムゲイン(インカム)

インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。

キャピタルゲイン(売却益/譲渡所得)

キャピタルゲインとは、株式や不動産、投資信託などの資産を購入した価格よりも高く売却したことによって得られる利益のことです。一般的な経済用語としては「売却益」と呼ばれ、資産運用における収益のひとつとして広く使われています。日本の税法においては、このキャピタルゲインは「譲渡所得」として分類され、確定申告などで所得として扱われます。つまり、経済的な意味ではキャピタルゲインと譲渡所得は同様の概念を指しますが、前者が広義の利益、後者が課税対象としての所得という違いがあります。投資の成果を判断したり、税金を計算したりするうえで、両者の使われ方を正しく理解することが大切です。

カントリーリスク

カントリーリスクとは、ある国に関連した投資やビジネスを行う際に、その国特有の事情によって損失が生じるおそれのあるリスクのことをいいます。たとえば、政権交代や政治不安、戦争、法制度の変更、為替の急変、債務不履行(デフォルト)など、その国の経済的・政治的な状況によって投資の価値が大きく変動する可能性があります。 特に新興国では、このリスクが高いとされ、投資する際には慎重な情報収集と判断が必要です。カントリーリスクは個別企業の経営状況とは関係なく、その国全体の事情によって発生するため、海外投資や国際分散投資において注意すべき重要な要素です。

金利変動リスク

金利変動リスクとは、市場金利の上昇・下降に伴い保有資産の価格や収益が変わる可能性を指します。固定金利債券の場合、金利が上がれば新発債の利息が高くなり既存債券の魅力が薄れるため価格は下落し、逆に金利が下がれば既存債券の利息が相対的に高く映るため価格は上昇しやすくなります。価格の振れ幅は「デュレーション」と呼ばれる指標で測定でき、残存期間が長いほど同じ1%の金利変化でも値動きが大きくなる点が特徴です。短期債は影響が小さく、長期債は大きいという感覚を持つとリスク把握が容易になります。 金利を動かす主因は中央銀行の政策金利変更や景気の強弱、インフレ期待であり、これらのニュースを追うことで金利の方向性をある程度予測できます。ただし金利の動向は株式や不動産投資信託(REIT)にも波及し、企業の資金調達コストや配当余力、賃料収入見通しを通じて価格変動をもたらすため、債券以外にも広く目配りが必要です。さらに変動金利債券や変動金利住宅ローンのように、金利上昇局面で利息が増えるものも存在する一方、支払利息が膨らむ負の側面もある点には注意が求められます。 リスクを抑えながらリターンを狙うには複数の打ち手があります。償還時期の異なる債券を階段状に保有して高金利局面で再投資しやすくするラダー戦略、金利上昇期にはデュレーションを短くして価格下落を抑え、低下期には長くして値上がり益を取りにいく期間調整、株式やREIT、金利ヘッジETFなど異なる値動きを示す資産を組み合わせる分散投資、さらにはポートフォリオの一部を変動金利商品に振り替えて上昇メリットを享受する方法が代表的です。金利変動リスクを定量的に測り、運用計画を経済情勢に合わせて定期的に見直すことで、長期投資でも過度な値下がりを抑えつつ安定的な収益を目指せます。

信用リスク(クレジットリスク)

信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。

効率的フロンティア

効率的フロンティアは、複数の資産を組み合わせたポートフォリオのうち、同じリスクで最も高い期待リターンを得る、あるいは同じ期待リターンで最も低いリスクに抑えられる最適な組み合わせを結んだ曲線です。 リスク(通常はリターンの標準偏差)を横軸に、期待リターンを縦軸に取ってポートフォリオをプロットすると、右肩上がりの弓形を描くラインが現れ、この線上のポートフォリオが「効率的」と位置付けられます。フロンティアより下にあるポートフォリオは、同じリスクでリターンが低いか、同じリターンでリスクが高い「非効率」な状態です。 自身の許容リスクや目標リターンを踏まえて効率的フロンティア上からポートフォリオを選択すれば、無駄なリスクを避けつつ合理的な資産配分が可能になります。リスクとリターンの関係をデータで可視化し、根拠をもった運用方針を立てるうえで欠かせない概念です。

シャープレシオ

金融商品の運用成績を測るための指標のひとつで、単純なリターンではなく、そのリターンを得るためにどのくらいのリスクを取っているかを計測したもの。 月次リターンのバラつきを示す標準偏差をリスク尺度として、負担したリスク1単位あたりの収益効率性をみるための指標。 数値の大きい方が効率よく運用されていることを示す。 ポートフォリオのリターン、標準偏差、無リスク資産の収益率で計算、具体的に以下の計算式で求められる。 (ファンドの平均リターン-安全資産利子率)÷標準偏差

流動性リスク

流動性リスクとは、資産を売却したいときに市場で買い手が見つからず、希望する価格で売却できないリスクのことを指します。特に市場が混乱した場合や、取引量の少ない資産では、このリスクが顕著になります。例えば、不動産や未上場株式、流動性の低い債券などは、売却に時間がかかることが多く、想定よりも低い価格での取引を余儀なくされる場合があります。金融機関や企業にとっては、必要な資金を調達できずに支払いが滞る可能性があることを意味し、経済危機や市場の急激な変動時には特に注意が必要です。投資ポートフォリオを構築する際には、資産の換金しやすさを考慮し、現金や流動性の高い資産とのバランスを取ることが重要とされます。

ヘッジ

ヘッジとは、価格変動や為替変動などのリスク(不確実性)から資産を守るために、あらかじめ対策を講じることを意味します。資産運用の分野では、将来起こりうる損失を緩和または回避するために、別の取引や金融商品を利用してリスクを相殺する行為を指します。 たとえば、外貨建て資産を保有している場合、円高が進むとその価値が目減りするリスクがあります。このとき、為替予約や為替先物といったヘッジ手段を使えば、円高による損失を一定程度防ぐことができます。また、株式市場の下落に備えて、先物取引やプットオプションを利用することも、価格下落に対するヘッジになります。 ヘッジは、利益を狙うための手段というよりも、損失を限定し、安定した運用成果を得るためのリスク管理策として使われます。完全にリスクをゼロにすることはできませんが、価格変動による影響を抑えたい場合には非常に有効です。ただし、ヘッジにはコストがかかることも多く、その効果と費用のバランスをよく見極めて判断することが重要です。

ポートフォリオ

ポートフォリオとは、資産運用における投資対象の組み合わせを指します。分散投資を目的として、株式、債券、不動産、オルタナティブ資産などの異なる資産クラスを適切な比率で構成します。投資家のリスク許容度や目標に応じてポートフォリオを設計し、リスクとリターンのバランスを最適化します。また、運用期間中に市場状況が変化した場合には、リバランスを通じて当初の配分比率を維持します。ポートフォリオ管理は、リスク管理の重要な手法です。

分散投資

分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。

リスク

リスクとは、資産運用において、期待している結果とは異なる結果が生じる可能性のことを指します。具体的には、投資による損失が発生するかもしれない不確実性を意味しますが、必ずしも悪い結果だけを指すわけではなく、期待以上の利益が出る可能性もリスクの一部とされます。リスクには、株価の変動、金利の変動、為替レートの変動などさまざまな種類があり、それぞれに応じた対策が求められます。資産運用を行う上では、自分がどの程度のリスクを受け入れられるかを理解し、それに応じた投資戦略を立てることが非常に重要です。

リバランス

リバランスとは、ポートフォリオを構築した後、市場の変動によって変化した資産配分比率を当初設定した目標比率に戻す投資手法です。 具体的には、値上がりした資産や銘柄を売却し、値下がりした資産や銘柄を買い増すことで、ポートフォリオ全体の資産構成比率を維持します。これは過剰なリスクを回避し、ポートフォリオの安定性を保つためのリスク管理手法として、定期的に実施されます。 例えば、株式が上昇して目標比率を超えた場合、その一部を売却して債券や現金に再配分するといった調整を行います。なお、近年では自動リバランス機能を提供する投資サービスも登場しています。

リターン

リターンとは、投資によって得られる利益や収益のことを指します。たとえば、株式を購入して値上がりした場合の売却益(キャピタルゲイン)や、債券の利息、投資信託の分配金(インカムゲイン)などがリターンにあたります。 これらを合計したものは「トータルリターン」と呼ばれ、投資の成果を総合的に示す指標です。リターンは、元本に対してどれだけ増えたかを「%(パーセント)」で表し、特に長期投資では「年率リターン」で比較されることが一般的です。 リターンが高いほど投資先として魅力的に感じられますが、そのぶんリスク(価格変動の可能性)も高くなる傾向があるため、自分の目的やリスク許容度に応じて、適切なリターンを見込むことが大切です。

価格変動リスク

価格変動リスクとは、株式や債券などの金融商品の価格が、経済状況や金利動向、企業業績などの影響で上下する可能性のことです。株式は企業業績の悪化や市場不安で急落するリスクがあります。 一方、債券の場合、発行時の固定利率と市場金利との差が変動するため、市場金利が上昇すると既発債の魅力が薄れ、途中売却時に購入時より低い価格で取引されるリスクが生じます。ただし、満期まで保有すれば額面通りに償還されるため、長期保有によってこのリスクを回避できます。

ハイリスク・ハイリターン

「ハイリスク・ハイリターン」とは、リスクが高い投資ほど、リターン(利益)も大きくなる可能性があるという投資の原則を指します。リスクが高い投資とは、価格の変動が激しい、予測が難しいなどの特徴があり、その分、投資で得られる利益も大きくなることがあります。しかし、反対に損失を被るリスクも大きくなるため、慎重に判断する必要があります。 例えば、株式投資や暗号資産などはハイリスク・ハイリターンの代表例です。短期間で大きな利益を得る可能性がある一方で、急激な価格下落によって大きな損失を被るリスクもあります。投資初心者にとっては、自分のリスク許容度をしっかり把握し、慎重に投資判断を行うことが大切です。

ローリスク・ローリターン

ローリスク・ローリターンとは、投資の世界で「リスクが低い投資は、その分リターン(利益)も少ない」という考え方です。 たとえば、株式よりも債券や定期預金のような安全性の高い金融商品を選ぶと、大きな損失のリスクは減りますが、高い利益も期待しにくくなります。リスクが低いというのは、価格の変動が少ないという意味で、値動きが安定している分、急激な利益の増加もあまり見込めません。 この方法は、大きなリスクを取りたくない人や、退職後の安定した収入を求める人に向いています。また、市場の動きが不安定なときにも、資産を守りながら少しずつ増やす手段として活用されます。

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