
年金の税金はいくらから?年金所得・公的年金控除の仕組みと計算方法を徹底解説
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公開:
2025.01.07
更新:
2025.06.12
「年金の税金はいくらから発生する?」65歳未満108万円・65歳以上158万円という目安だけを信じると、控除縮小や他所得合算で税・社会保険料が想定以上に膨らむ恐れがあります。本記事では国民年金・厚生年金に私的年金を重ねたときの年金所得計算と公的年金等控除の段階別早見表を示し、211万円・155万円の壁や海外転出時課税まで整理。受取方法とタイミングを最適化して手取りを守る判断軸を提示します。
サクッとわかる!簡単要約
本記事を読むと、65歳未満108万円・65歳以上158万円超で源泉徴収が生じる理由、公的年金等控除の段階別計算式、211万円・155万円の壁が住民税や介護保険料まで連鎖する仕組みを一気に把握できます。さらに国民年金・厚生年金にiDeCoや企業年金を上乗せした場合のシミュレーションや海外転出時20.42%課税の回避策も確認でき、受給開始年齢や一時金・年金形式を調整して生涯手取りを最大化する設計図が描けるようになります。
公的年金と私的年金の種類|国民年金・厚生年金・個人年金の違い
年金には大きく分けて「公的年金」と「私的年金」があります。
1階部分の国民年金(基礎年金)は、20歳以上60歳未満の方が必ず加入する公的年金です。2階部分の厚生年金は会社員や公務員が加入する公的年金ですが、厚生年金に加入しない自営業者や学生、専業主婦(夫)などは私的年金である国民年金基金やiDeCo(個人型確定拠出年金)で備えられます。
さらに、国民年金と厚生年金の上乗せとして私的年金に加入したり、複数の私的年金を活用すれば3階部分の年金を作れます。以下で、それぞれにどのような年金制度があるのか確認しましょう。
公的年金制度:国民年金と厚生年金など特定条件で加入必須な年金
日本の公的年金制度は以下の2種類です。
- 国民年金:20歳以上60歳未満のすべての方が加入する
- 厚生年金:会社員・公務員の方が加入する
専業主婦や学生、自営業者の方は国民年金のみ加入しますが、会社員・公務員の方は国民年金と厚生年金の2つの年金制度に加入します。
私的年金:iDeCo・個人年金保険など公的年金に上乗せする任意加入の年金
私的年金とは、公的年金の上乗せとなる年金です。公的年金は条件を満たせば強制的に加入しますが、私的年金は勤務先の制度や個人の判断次第となるため、全員が加入するとは限りません。
年金 | 説明 |
---|---|
確定給付企業年金(DB) | 確定給付企業年金制度を導入している企業に勤めている方のみ利用できる |
企業型確定拠出年金(企業型DC) | 企業型確定拠出年金制度を導入している企業に勤めている方のみ利用できる |
個人型確定拠出年金(iDeCo) | 国民年金制度加入者は利用できる(国民年金保険料の免除または猶予を受けている方、企業型確定拠出年金加入者でマッチング拠出を選択していないなど、例外あり) |
国民年金基金 | 第1号被保険者や国民年金の任意加入者が利用できる |
個人年金保険 | 生命保険会社によって加入できる年齢は異なる |
例えば、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入できるかどうかは勤務先次第です。制度の有無や加入対象者の範囲が企業ごとに異なります。
個人型確定拠出年金(iDeCo)や個人年金保険は、確定給付企業年金と企業型確定拠出年金よりも加入できる範囲が広いという特徴があります。加入する際の窓口となるのは、金融機関や保険会社です。
年金にはいくらから税金がかかる?実は雑所得な年金の課税
受け取る年金は「年金所得」という俗称で呼ばれることもありますが、所得税法上は「雑所得」に該当します。
課税対象となる年金の計算式は「年金の総額-公的年金控除」です。雑所得は総合課税となるため、年金以外の雑所得や雑所得以外の課税対象を含めて、所得税率を乗じれば所得税額を計算できます。
例えば、65歳以上で年金額が200万円の方が受けられる公的年金等控除は110万円です。
なお、源泉徴収される税額は、年金額から公的年金等控除額を差し引いた額に5.105%を乗じた金額で一定です。
公的年金から税金が源泉徴収される基準は、以下のとおりです(障害年金と遺族年金は非課税)。
- 65歳未満の方:108万円を超える
- 65歳以上の方:158万円を超える
公的年金や私的年金などを含めた年金収入が基準を超える場合、源泉徴収されたうえで年金が支給されます。ただし、在職していない状況で年金を受給している方は、配偶者控除や扶養控除を適用させるための年末調整が行われません。
各種控除を受けられる方は翌年の確定申告を通じて税金の還付を受けられる可能性があるため、必要に応じて確定申告を行いましょう。なお、確定申告は必ずしも行う必要はなく、還付を受けられないことを承知で確定申告を省略しても問題ありません。
所得控除以上の年金を受給する場合、年金に対して課税されます。所得控除額や年金額は個人差があるため、いくらから課税されるかは一概にいえません。
公的年金だけでなく、私的年金も年金形式で受け取る場合は雑所得として取り扱われます。一時金で受け取る場合は、雑所得ではなく退職所得となる点に留意しましょう。
個人年金保険は、契約者と年金受取人次第では贈与税がかかります。年金受取開始後に年金受取人が亡くなり、遺族が年金を受け取る場合は相続税の対象となるなど、課税関係が複雑です。
企業年金制度がある企業に勤めている方やiDeCo、個人年金保険に加入している方は、受け取り方で課税の方法が異なる点に注意しましょう。
なお、損をしない退職金の受け取り方や退職所得の計算方法は、以下の記事で詳しく解説しています。
公的年金等控除の早見表(65歳未満/65歳以上)
年金に係る税額を計算するうえで重要なのが、公的年金等控除です。公的年金等控除とは年金収入から控除される所得控除の一つで、年金を受給している方の年齢や収入金額によって以下のように異なります。
【65歳未満】
公的年金等の 収入金額 | 公的年金等控除額 (年金以外の所得が 年間1,000万円以下) | 公的年金等控除額 (年金以外の所得が 年間1,000万円超~2,000万円) | 公的年金等控除額 (年金以外の所得が 年間2,000万円超) |
---|---|---|---|
130万円以下 | 60万円 | 50万円 | 40万円 |
130万円超 410万円未満 | 年金収入金額×0.25 +27万5,000円 | 年金収入金額×0.25 +17万5,000円 | 年金収入金額×0.25 +7万5,000円 |
410万円以上 770万円未満 | 年金収入金額×0.15 +68万5,000円 | 年金収入金額×0.15 +58万5,000円 | 年金収入金額×0.15 +48万5,000円 |
770万円以上 1,000万円未満 | 年金収入金額×0.05 +145万5,000円 | 年金収入金額×0.05 +135万5,000円 | 年金収入金額×0.05 +125万5,000円 |
1,000万円以上 | 195万5,000円 | 185万5,000円 | 175万5,000円 |
【65歳以上】
公的年金等の 収入金額 | 公的年金等控除額 (年金以外の所得が 年間1,000万円以下) | 公的年金等控除額 (年金以外の所得が 年間1,000万円超~2,000万円) | 公的年金等控除額 (年金以外の所得が 年間2,000万円超) |
---|---|---|---|
330万円以下 | 110万円 | 100万円 | 90万円 |
330万円超 410万円未満 | 年金収入金額×0.25 +27万5,000円 | 年金収入金額×0.25 +17万5,000円 | 年金収入金額×0.25 +7万5,000円 |
410万円以上 770万円未満 | 年金収入金額×0.15 +68万5,000円 | 年金収入金額×0.15 +58万5,000円 | 年金収入金額×0.15 +48万5,000円 |
770万円以上 1,000万円未満 | 年金収入金額×0.05 +145万5,000円 | 年金収入金額×0.05 +135万5,000円 | 年金収入金額×0.05 +125万5,000円 |
1,000万円以上 | 195万5,000円 | 185万5,000円 | 175万5,000円 |
雑所得は総合課税の対象となる所得の一つで、ほかの所得と合算して所得税額が決まります。年金受給者の税金について、具体的なケースに当てはめて考えてみましょう。
【条件】
- 70歳
- 年金収入:350万円(うち、公的年金200万円・私的年金150万円)
- 不動産所得(家賃収入から諸経費を差し引いた額):300万円
- 社会保険料:50万円
- 公的年金等控除:350万円×0.25+27万5,000円=115万円
- 基礎控除:48万円
以上の場合、まずは年金に係る税金と不動産所得に関わる税金を分けて計算します。
- 年金(雑所得):350万円-115万円=235万円
- 不動産所得:300万円
- 所得の合計:235万円+300万円=535万円
- 控除合計:社会保険料控除50万円+基礎控除48万円=98万円
- 課税所得:535万円ー98万円=437万円
課税所得は437万円となり、以下の速算表に当てはめると、所得税額は「(437万円×20%)427,500円=44万,6,500円」となります。住民税は「437万円×10%=43万7,000円」です。
課税所得金額 | 所得税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円から1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円から3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円から6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円から8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円から17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円から39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
このように、年金所得以外にも所得がある場合は、それぞれの所得を含めて税額を計算します。
今回は年金所得と不動産所得の例でシミュレーションしましたが、給与所得や事業所得を得ている方も、同じような流れです。それぞれの課税所得を計算し、各種控除を差し引いたうえで速算表に当てはめて計算しましょう。
年金受給者で確定申告が必要な人は?400万円基準を解説
以下にいずれにも該当する方は、公的年金の収入に対する確定申告は原則として必要ありません。
- 公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下である
- 公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(※)が20万円以下である
※給与所得や年金以外の雑所得、配当所得など
ただし、医療費控除や社会保険料控除などの所得控除を適用させ、所得税の還付を受けるためには確定申告が必要です。ただし、確定申告は必須ではないため、行いたい方だけ行えば問題ありません。
海外在住(日本非居住者)の年金課税と租税条約
年金を受けている方が海外に転出する場合は「非居住者」となり、課税関係が「居住者」と異なります。居住者とは、国内に住所を有している方や現在まで引き続き1年以上居所を有する個人を指しており、居住者以外の個人が「非居住者」として取り扱われます。
非居住者が得た「国内源泉所得」は、源泉徴収の対象です。年金は国内源泉所得の対象で、以下の計算式で算出した金額が源泉徴収されます。
{年金支給額–(5万円※×年金額に係る月数)}×20.42%
※(65歳以上の場合は9万5,000円)
受給している年金が老齢年金で、居住する国が日本と「年金の受け取りに関する租税条約」を締結している場合、所定の手続きをすれば所得税の免除を受けられます。
租税条約を締結している国は、2024年9月現在で73カ国あります。国によって必要な書類は異なりますが、該当する方は「租税条約に関する届出書」をはじめとした必要書類を日本年金機構に提出しましょう。
自己負担が一気に増す?年金211万円・155万円の壁と住民税非課税ライン
年金生活において、住民税が非課税になるかどうかは、自己負担額に大きな影響を与えます。いわゆる「年金211万円の壁」や「年金155万円の壁」といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、これらは特定の条件下での目安です。正確な知識を身につけ、ご自身の状況を確認しましょう。
「年金211万円の壁」「年金155万円の壁」とは? (65歳以上・年金収入のみの場合)
これらの「壁」とは、主に65歳以上で年金収入のみの方が、住民税非課税世帯になるかどうかの収入額の目安を指します。
年金211万円の壁とは?
65歳以上の夫婦二人世帯(例:夫が年金収入のみで、妻が夫の扶養に入っている場合)で、主に都市部(1級地)にお住まいの場合の住民税非課税の年金収入目安です。
年金155万円の壁とは?
65歳以上の単身世帯で、主に都市部(1級地)にお住まいの場合の住民税非課税の年金収入目安です。
住民税が非課税になる所得基準を理解する
住民税には「所得割」(所得に応じて課税)と「均等割」(所得にかかわらず一定額課税)があります。両方が非課税となる所得基準は、お住まいの自治体や扶養親族の状況によって異なります。
一般的に、前年の合計所得金額が以下の基準を下回る場合に住民税が非課税となります。
所得割の非課税基準
多くの自治体で、前年の合計所得金額が「35万円 × (本人+扶養人数) + 42万円(32万円+基礎控除加算10万円など自治体により異なる場合あり)」以下の場合に非課税となります。単身者の場合、合計所得金額が45万円以下(基礎控除43万円を含む)であれば、多くの場合、所得割はかかりません。特に合計所得金額が43万円(住民税の基礎控除額)以下であれば、所得割は確実に非課税です。
均等割の非課税基準
均等割の非課税基準は自治体によって異なり、条例で定められています。例えば、単身者の場合、合計所得金額が45万円以下(東京23区など)で均等割も非課税となる自治体が多いですが、38万円や41.5万円、42万円など、これより低い基準の自治体もあります。扶養親族がいる場合は、非課税限度額が上がります。
公的年金の場合の所得計算
年金収入から公的年金等控除額を差し引いたものが「年金所得」となります。 年金所得=年金収入−公的年金等控除額 この年金所得が、上記の住民税非課税基準(合計所得金額)と比較されます。
【地域差に注意】級地区分と住民税非課税ラインの目安(65歳以上・年金収入のみ)
住民税の非課税限度額は、お住まいの自治体が属する厚生労働省の「級地区分」(主に生活保護基準で用いられる地域区分で、物価等を反映)などによって、条例で定められる基準額が若干異なります。以下はあくまで目安です。
世帯区分 | 1級地(都市部など) | 2級地 | 3級地(地方部など) |
---|---|---|---|
二人以上世帯 | 約211万円 | 約203万円 | 約193万円 |
単身世帯 | 約155万円 | 約152万円 | 約148万円 |
例えば、65歳以上単身世帯で3級地にお住まいの場合、年金収入が約148万円を超えると住民税が課税され、それに伴い他の自己負担も増える可能性があります。必ずご自身の自治体のウェブサイト等で、正確な非課税限度額や級地区分(またはそれに準ずる地域区分)をご確認ください。
「壁」を超えると負担急増!住民税・介護保険料・医療費への影響
住民税非課税世帯でなくなると(合計所得金額が非課税限度額を1円でも超えると)、翌年度から様々な負担が増える可能性があります。
住民税:均等割+所得割で年数千~数万円の増税
所得割は自治体ごとにおおむね5〜10%。均等割も年4,000円前後が追加され、手取りが確実に目減りします。
介護保険料:軽減段階が外れ年額数万円アップ
65歳以上は所得段階に応じて最大9割軽減。非課税枠を外れると第3段階以上となり、年額で2〜7万円前後の負担増になるケースが目立ちます。
医療費自己負担など “連鎖コスト” にも注意
非課税世帯向けの高額療養費・入院食事療養費の減額、後期高齢者医療保険料の軽減も同時に消失。壁をまたいだ瞬間から、医療・介護の自己負担率まで連動して上がる点が落とし穴です。
住民税非課税を維持するための対策例
住民税非課税の恩恵を維持するためには、課税対象となる所得を基準額以下に抑えることが重要です。以下の方法を検討してみましょう。
① 繰下げ受給で年金収入を平準化
受給開始を1年遅らせるだけで収入が前後の年に分散し、壁超過を防げる場合があります。
② 社会保険料・生命保険料控除で合計所得を圧縮
国民年金保険料の前納や配偶者分負担で社会保険料控除を上積みすれば、上限ぎりぎりの収入でも43万円以内に引き下げ可能。
③ 配偶者(特別)控除を利用
配偶者の所得が一定額以下なら最大38万円(特別控除は48万円)を差し引けるため、世帯単位で壁内に収まるケースが多い。
④ ふるさと納税・医療費控除で住民税を還付させる
年末までに寄附金控除や医療費控除を活用し、翌年度の住民税を実質軽減・還付させる裏技。ふるさと納税はワンストップ特例なら申告不要で手軽です。
この記事のまとめ
公的年金と私的年金の合算額が課税・住民税非課税ラインを超えないか、控除額と他所得とのバランスを指標に定期点検し、受給開始時期や一時金化で流動性を確保しつつコストと税負担を最小化する設計が肝心です。また211万円・155万円の壁を超えると介護保険料や医療費負担まで連鎖して増加するため、手取りベースで比較した資産配分と家計キャッシュフローの整合性を確認しましょう。海外移住の可能性があれば租税条約による源泉徴収免除も検討し、想定リスク許容度に合わせて受取方法を選択ください。必要に応じて専門家に相談するのも選択肢です。

金融系ライター
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,000記事以上の執筆実績あり。
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国民年金基金連合会
国民年金基金連合会は、国民年金法に基づき設立された公的な年金制度であり、国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして、自営業者など国民年金の第1号被保険者の老後の所得保障の役割を担うものです。 国民年金基金連合会は、転居や転職により基金の加入員資格を喪失した中途脱退者に対して、年金や遺族一時金の支給を行っています。また、平成14年からは確定拠出年金の個人型年金の実施主体として、規約の作成や掛け金の収納業務なども行っています。 退職等により加入していた企業型DCを脱退し、6ヶ月以上移管の手続きを行わなかった場合、国民年金基金連合会に自動的に移管されます。その場合、現金で保管されるため追加の積立や運用指図を行うことができず、さらに移管時と保管時に手数料がかかります。
GPIF
GPIFとはGovernment Pension Investment Fundの略で、日本の年金積立金管理運用独立行政法人のこと。預託された公的年金積立金の管理、運用を行っている。 年金保険料から集められた公的年金積立金は、厚生労働大臣の預託により、GPIFが信託銀行や投資顧問会社などの運用受託機関を通して国内外の債券市場や株式市場で運用し、運用収益とともに年金給付の原資としている。 公的年金という性質上、長期的に安全かつ効率的な観点が重視されますが、2014年度以降、運用改善の流れからリスク運用の比率が高まり、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%という基本ポートフォリオが組まれてきた。2020年4月から5年間の第4期中期目標期間においては、各25%ずつに変更されている。
総合課税
総合課税は、給与や年金、事業収入、不動産収入、利子、配当など、1年間に得たさまざまな所得を合算し、その合計額に累進税率を適用して所得税を計算する方式です。 所得が増えるほど税率が高くなるため、高所得者ほど税負担が大きくなる点が特徴です。一方、金融所得には総合課税以外の課税方法を選択できる場合があります。 たとえば、株式譲渡益や先物取引益などは「申告分離課税」を選ぶことで、ほかの所得と区分して一律20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)で申告できます。 また、預貯金利息や一部の公社債利子などは、支払元が税金を源泉徴収する「源泉分離課税」となり、原則として確定申告は不要です。配当や利子のように課税方式を選択できるケースでは、ご自身の所得水準や控除の有無、損益通算の可能性を踏まえ、総合課税・申告分離課税・源泉分離課税のどれを採用するかを検討することが、最終的な税負担を抑えるうえで重要になります。
住民税
住民税は、居住地の自治体(市区町村および都道府県)に納める地方税で、地域の行政サービスを賄うために使われます。住民税は「所得割」と「均等割」の2つで構成されます。 所得割は、前年の所得に基づき一律の税率(多くの場合10%)で計算されます。一方、均等割は所得に関わらず一律の金額(全国基準では年額5,000円程度)を納める部分です。 住民税は、所得税のような累進課税ではなく比例課税が基本で、納税額は所得や扶養状況などにより異なります。また、住民税は原則として前年の所得に基づき計算されるため、納税は翌年度に行われます。これにより、地域社会の運営を支える重要な財源となっています。