
老後の不安を解消!知っておきたい資産寿命の延ばし方
難易度:
執筆者:
公開:
2023.08.16
更新:
2025.02.26
目次
ステップ3:見込まれる収入と資産、生活に必要な支出から資産寿命を計算する
資産寿命を延ばす方法1:複数の金融商品を組み合わせた資産運用で安定的に資産を増やす
資産寿命を延ばす方法2:支出を管理し資産の取り崩しを緩やかにする
「そろそろ定年が見えてきたけれど、老後は本当に大丈夫だろうか」「年金だけで暮らしていけるか不安」「退職後の生活が長くなると聞くけれど、資産を使い切ってしまうのでは?」──こうした不安を抱く方は多いのではないでしょうか。
人生100年時代と言われる現代、退職後の生活期間がますます長くなるなか、限りあるお金をどう使えば老後も安心して暮らしていけるのかを早めに考えておく必要があります。そこで大切になるのが、「資産寿命」という考え方です。
本記事では、資産寿命を把握するための3つのステップと、資産寿命を延ばす3つの方法をご説明します。
資産寿命とは?なぜ計算するのが大事なの?
資産寿命とは、あなたが現在持っている資産(貯金や不動産など)が、現在の生活水準を維持しながら何年間使い続けられるかを示す指標です。つまり、あなたのお金がどれくらいの期間でなくなるか、ということを示しています。
資産寿命の計算方法
資産寿命を計算する際は、
資産総額 ÷ 毎月(または毎年)の収支の不足額
などといった方法を用いるのが一般的です。
退職後の収入(公的年金や退職金の取り崩しなど)と支出額の差額を算出し、その不足分を資産から補填し続けた場合、
あとどのくらいの期間で資産が尽きるのか
を把握するのです。
たとえば、あなたが60歳で、現在の貯金が5000万円、毎月の生活費が25万円だとします。この場合、貯金を毎月25万円ずつ使っていくと、5000万円は200ヶ月、つまり約16年7ヶ月で使い果たされます。これが資産寿命です。
資産寿命を計算することが大事な理由
まず、資産寿命を計算する大きな理由は以下の2つです。
- 老後の生活設計に具体性が生まれる
- 早期に対策を講じることでリスクを軽減できる
老後の生活設計に具体性が生まれる
「漠然とした不安」がある状態では対策も曖昧になりがちです。資産寿命を数字で計測し、「どれだけのお金が、どれくらいの期間でなくなるか」を把握すれば、必要な対策がより明確になります。
早期に対策を講じることでリスクを軽減できる
もし「資産寿命が短すぎる」と気付いた場合、まだ現役で働いているうちに、資産運用や支出の見直しなどを始めることができます。早めに対策するほど、老後のお金の不安を軽減しやすくなります。
資産寿命を把握するために重要な3つのステップ
資産寿命とは、あなたが持っている資産がどれくらいの期間で使い果たされるかを示す指標です。これを理解し、適切に管理することで、安定した生活を維持し、資産を最大限に活用することが可能になります。
以下では、資産寿命を正確に把握するために重要な3つのステップを詳しく説明します。
ステップ1:現在の資産状況を確認する
現在の資産状況を正確に把握することは、資産寿命を延ばす第一歩です。
銀行の預貯金、退職金、家や土地など、全部合わせてどれくらいあるのかをリストにしてみましょう。このリストを作ることで、これからの人生でどれくらいのお金が使えるのかがわかります。
難しいと感じる場合は、専門家に相談したり、資産管理ツールを使ってみると良いでしょう。
例えば、投資のコンシェルジュのような資産管理ツールを使うと、現在保有している資産を見える化することができます。
資産状況を一覧化し、日々の変化を計測できるようにすることで、正しく現状を把握することができます。
ステップ2:月々の出費を整理し、支出を正確に把握する
次に、毎月どれくらいお金を使っているのかをチェックしましょう。毎月の支出を把握することは、資産寿命を理解し、適切に管理するために必要不可欠です。
家賃や光熱費などの毎月決まった出費、食費や趣味に使うお金、これからの大きな出費(例:孫へのプレゼント、旅行など)をしっかり整理して数字で確認してみましょう。
支出のパターンを把握し整理することで、無駄な支出が削減できれば、資産寿命を延ばすことも可能です。これまで支出の分析をしてこなかった初心者の方でも、まずは家計簿アプリや紙に書いて整理してみることがおすすめです。
ステップ3:見込まれる収入と資産、生活に必要な支出から資産寿命を計算する
出典:金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」の概要
資産のリストができ、月々の支出が整理できたら、現状の資産寿命を計算してみましょう。
例えば、一般的な65歳年金受給者夫婦の場合、年金が毎月20.5万円支給され、支出が毎月26万円というデータがあります。つまり、支出に対して、収入が毎月5.5万円不足している状態になります。この場合、持っている資産から毎月5.5万円を切り崩して生活することになります。
もし仮に1100万円の資産があり、毎月5.5万円取り崩していく場合、資産寿命は16年8ヶ月(200ヶ月)です。日本人の平均寿命は男性が約81歳、女性が約88歳。資産寿命16年8ヶ月だと少し心許ないかもしれません。
仮に支出が抑えられて、毎月5万円の取り崩しになれば、資産寿命は220ヶ月。18年4ヶ月と、約2年資産寿命が延長されます。あるいは、資産を運用し1100万円の資産が10%増の1210万円になれば、同様に資産寿命が220ヶ月となります。
あるいは、ゆとりある老後の生活を送ろうとすると、毎月34.9万円が必要です。年金が20.5万円の場合、毎月14.4万円不足します。1100万円の資産だと、6年4ヶ月(76ヶ月)しか保ちません。
もしかりに運用して資産が1210万円に増額したら、少しゆとりのある生活を送って取崩額が14.4万円だったとしても、資産寿命は242ヶ月、つまり20年2ヶ月です。
このように、現在の資産で資産寿命を計算することが、現状を把握するスタート地点です。これを踏まえて、ご自身の理想の生活スタイルを踏まえ、どのように資産を運用していくのか、というのが次に考えることです。
資産寿命の計算をするには、ライフプラン作成ツールを使ってみると、支出の変化をすぐに反映し管理できるため便利です。
投資のコンシェルジュには簡単に使えるライフプラン作成ツールもあります。資産が連携されていれば、現状の収支や今後の収支の変化、特別な支出などの情報を入力するだけで、ライフプランに応じた資産状況の変化を簡単にシミュレーションすることができます。
どんぶり勘定にするのではなく、数字で変化を見ることによって、正しく将来の状況を把握できます。このように「いまのままだと何年でお金が尽きるか」を把握したうえで、「どれくらい運用すればよいのか」「支出をどのくらい抑えるとよいのか」を考えるのがポイントです。
老後の安心に向けた資産寿命の延ばし方
資産寿命を延ばすためには、資産を増やす戦略と支出を抑える戦略が必要です。これらは、どのような生活を送りたいかという支出の観点と、そのためにどの程度資産を増やす必要があるのか、という観点の双方のバランスを取る必要があります。
また、予期せぬ出費に備えて緊急資金を確保することも重要です。
以下では、これらの戦略を具体的にどのように実行するかを詳しく解説します。
資産寿命を延ばす方法1:複数の金融商品を組み合わせた資産運用で安定的に資産を増やす
資産を増加させ、資産寿命を延ばしたいと考える場合、何らかの金融商品を購入して資産運用するのが一般的です。金融商品による資産運用の際には、金融商品の価格が下落し資産が目減りしてしまうリスクと、価格が上昇したときに得られる利益のリターンのバランスが重要です。
ハイリスク・ハイリターンの金融商品は、価格変動が大きく、大きなリターンが期待できる一方で、値崩れによりマイナスになってしまう可能性も大いにあります。一方、ローリスク・ローリターンの金融商品は、利回りが小さく資産の増加幅は大きくありませんが、値崩れにより資産が目減りする可能性も低いという特徴があります。
単体でローリスク・ハイリターンという都合の良い金融商品は存在せず、リターンの大きさとリスクの大きさは比例します。
ただし、複数種類の金融商品を上手く組み合わせることで、資産の全体としてリターンを大きく、リスクを小さくすることが出来ます。
このように、複数種類の金融商品を組み合わせて運用することを「ポートフォリオ運用」といいます。
超低金利が続く日本では、特に預貯金だけでは資産を増やすことが難しい環境にあります。そのため、資産の一部を投資信託や債券に置き換える「ポートフォリオ運用」が、資産寿命を延ばす上で有力な方法です。
投資信託や債券などの金融商品や、ポートフォリオ運用は難しそうに感じるかもしれませんが、適切な知識と戦略を持つことで、安定的かつ効果的に資産を増やすことが可能になります。
資産寿命を延ばす方法2:支出を管理し資産の取り崩しを緩やかにする
資産寿命を延ばすためのもう一つの重要な方法は、支出をコントロールすること、つまり、無駄な出費を控えることです。
日々の生活費や突発的な出費を計画し管理することで、資産の思わぬ減少を防ぎ、十分な資産寿命を確保することができます。
具体的な手段としては、予算作成とその実行があります。毎月の計画と実際の支出を比較し、不必要な支出が見つかれば削減します。また、節約策を実施して出費を抑えることも有効です。
資産寿命を延ばす方法3:予期せぬ急な出費に備えて緊急資金を事前に確保
緊急時に備えて資金を確保することは、資産寿命を延ばす上でとても重要です。
突然の出費や収入の減少に対応できるよう、日常の生活に必要な金額とは別に、手元に一定の資金を確保しておくことで、資産全体を守ることができます。
緊急資金は通常、生活費の3〜6ヶ月分が目安とされます。これにより、予期せぬ事態に対応しながら、計画通りの資産寿命を維持することが可能になります。
あるいは、生活上のリスクに備えて、保険に加入しておくことも選択肢の1つです。老後は病気や怪我による治療費や入院費など、経済的な負担が大きくなる可能性があります。このような突発的な出費が発生したときにカバーできるように保険で備える、ということも1つの選択肢です。
定期的なレビューと調整で資産寿命を延ばす
健康に過ごすために定期的な健康診断が必要なように、資産寿命を延ばすためには定期的な見直しと調整が必要です。
市場環境、自身のライフスタイル、目標、リスク許容度などは時間とともに変化します。
これらの変化に対応するためには、資産運用のポートフォリオや支出計画を定期的に見直し、必要に応じて調整することが重要です。また、緊急資金の状況も定期的に確認し、必要なら補充することも忘れてはなりません。
もし、資産運用が元々の想定よりも上手く行った場合、旅行など特別な支出ができる余地が生まれているかもしれません。時と場合によって考えることは様々です。
これらの見直しと調整は、資産寿命を最大限に延ばすための重要なステップです。具体的には、年に少なくとも1回、または大きなライフイベントがあるたびに、全体の資産状況を見直すことがおすすめです。
このように、定期的に正確な状態を把握し、主体的に調整を行うことで、安心して生活できます。
まとめ:計画的な資産運用で資産寿命を延ばそう
安心した老後生活を送るためには、自身の資産寿命を理解し、それを最大限に延ばす戦略が必要です。
まず、現在の資産状況と支出を明確に把握し、それに基づいて具体的な計画を立てることが大切です。これは、資産寿命を延ばすための基礎となるステップです。
次に、資産寿命を延ばすための具体的な戦略として、以下の3つが有効です。まず、リスクとリターンを適切にバランスさせた投資組み合わせ(ポートフォリオ)を作り、それを通じて資産を増やすこと。次に、無駄な支出を削減すること。そして、緊急時に備えて一定の資金を確保しておくことです。
そして、これらの計画は一度作ったら終わりではありません。定期的に計画と現状を比較し、ライフスタイルの変化に応じて調整を行うことが必要です。
これらのステップを踏むことで、資産寿命を延ばし、安定した生活を維持することが可能になります。資産運用は難しそうに思えるかもしれませんが、適切な計画と戦略を持つことで、誰でも実行できます。
もし、自分で行うことが不安であれば、資産運用の専門家であるファイナンシャル・アドバイザー(IFA)に相談することをお勧めします。IFAは現状の把握から資産運用計画の作成まで、専門的な知識を元に伴走をしてくれます。基本的には、IFAへの相談は無料です。専門家のアドバイスを活用して、自身の資産寿命を最大限に延ばしましょう。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
関連記事
関連質問
関連する専門用語
ポートフォリオ運用
投資資金を株式や債券など異なる複数のアセット(資産)に分けて投資する運用手法で、広義で分散投資を指す。値動きが異なる資産を組み合わせることで、価格変動リスクを低減させることが可能。
ハイリスク・ハイリターン
「ハイリスク・ハイリターン」とは、リスクが高い投資ほど、リターン(利益)も大きくなる可能性があるという投資の原則を指します。リスクが高い投資とは、価格の変動が激しい、予測が難しいなどの特徴があり、その分、投資で得られる利益も大きくなることがあります。しかし、反対に損失を被るリスクも大きくなるため、慎重に判断する必要があります。 例えば、株式投資や暗号資産などはハイリスク・ハイリターンの代表例です。短期間で大きな利益を得る可能性がある一方で、急激な価格下落によって大きな損失を被るリスクもあります。投資初心者にとっては、自分のリスク許容度をしっかり把握し、慎重に投資判断を行うことが大切です。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
独立系アドバイザー(IFA)
IFAとは、Independent Financial Advisorの略で、日本語では「独立系フィナンシャルアドバイザー」と呼ばれる資産運用の専門家を指す。内閣総理大臣より金融商品仲介業の登録を受け、1つ以上の証券会社と業務委託契約を締結し、投資家に対して資産運用のアドバイス業務や金融商品の仲介を行う。
リスク許容度
リスクとは収益(リターン)の振れ幅のこと。収益がどれくらいまでならマイナスになっても受け入れることができるか、という度合いのこと。