
保険金の受け取りと税金〜実例で解説する計算方法と注意点〜
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執筆者:
公開:
2025.03.05
更新:
2025.03.05
目次
保険に加入する際や給付金を受け取る際、どのような税金がかかるのかを正しく理解することは、とても大切です。この記事では、初心者の方にも分かりやすいよう、保険にかかる税金の種類や計算方法、注意点について具体例を交えて説明いたします。
保険はその種類と受取方法により税金の扱いが異なります。生命保険、医療保険、そして個人年金保険における税金の基本的な考え方と具体例について解説します。
保険の種類 | 課税の有無 | 課税内容 |
---|---|---|
死亡保険金 | 非課税 | 受取人が契約者と同一の場合は非課税。受取人が異なる場合は贈与税がかかる可能性があります。 |
医療保険の給付金 | 非課税 | 原則として非課税。ただし、他の所得に合算される場合がございます。 |
個人年金保険(年金形式) | 課税 | 雑所得として、受取額から支払保険料を差し引いた金額が課税対象となります。 |
個人年金保険(一時金形式) | 課税 | 一時所得として、受取額から払込保険料を引いた金額から特別控除を適用し、その半分が課税対象となります。 |
死亡保険の税金
死亡保険金にかかる税金は、契約者・被保険者・受取人の関係によって変わります。主に 「相続税」「所得税」「贈与税」 の3つのパターンがあります。
保険金が相続税の対象となる場合
契約者と被保険者が同一で、受取人が法定相続人(子や配偶者)の場合、「相続税」の対象となります。
相続税は500万円 × 法定相続人の数 まで非課税で、非課税枠を超えた分は、遺産と合算して相続税の計算をします。
具体例
受取人が配偶者、子供2人(法定相続人3人)
非課税枠 = 500万円 × 3人 = 1,500万円
受取額2,000万円の場合 → 1,500万円は非課税、500万円が相続税の対象
保険金が所得税(一時所得)の対象となる場合
契約者と被保険者が異なり、受取人が契約者本人の場合、受け取った保険金は「所得税(一時所得)」の対象になります。計算式は以下のとおりです。
課税対象の具体例
親が被保険者で、子ども(契約者)が保険料を支払っていた場合で、受取保険金 2,000万円、払込保険料 1,600万円の場合
(2,000万円 - 1,600万円 - 50万円)÷ 2 = 175万円が課税対象です。
保険金が贈与税の対象となる場合
契約者と被保険者が異なり、受取人が子供の場合、死亡保険金は原則「贈与税の対象」になります。基礎控除110万円 で、超えた分に対して贈与税がかかります。この場合、払込保険料は考慮されず、受け取った死亡保険金の総額が課税対象となります。
課税対象の具体例
契約者が父、被保険者が母、受取人が子供 の場合で、受取保険金 2,000万円、払込保険料 1,600万円の場合
課税対象額 = 2,000万円 - 110万円 = 1,890万円
保険料負担者による税金の違い
税法上、「誰が実際に保険料を負担したか」が重要です。「契約者=父、被保険者=母、受取人=子」の場合、税金の種類は「保険料の負担者」によって変わります。
被保険者(母)が保険料を支払っていた場合 は、相続税の対象(母の遺産)として取り扱われます。保険料を契約者(父)が支払っていた場合 は贈与税の対象となり、 受取人(子)が「父からの贈与」とみなされ、贈与税が課されます。 基礎控除110万円 を超えた部分に贈与税がかかります。
医療保険の給付金にかかる税金
個人が受け取る医療保険の給付金は、基本的に非課税です。たとえば、入院時に100万円の給付金を受け取った場合、その100万円は所得に含まれず、直接税金に影響しません。
ただし、法人が給付金を受け取る場合や、特殊な会計処理が必要な場合は、一旦収入(益金)として計上し、その後、対応する費用(損金)で相殺されるため、数字上は一時的に全体の所得に影響が出ることがあります。しかし、最終的にはその相殺処理により、課税所得に変動はありません。
また、医療費控除の面では、医療保険の給付金が実際に支払った医療費を補填するため、自己負担額が減ります。医療費控除は、実際に自己負担した医療費(=総医療費から給付金などを差し引いた金額)が一定額を超えた場合に適用されます。たとえば、100万円の医療費が発生し、同じく100万円の給付金を受け取った場合、自己負担額は0円になるため、医療費控除の対象となる金額も減り、控除による税金の軽減効果が小さくなります。
まとめると、個人の場合、医療保険の給付金自体は非課税ですが、医療費控除を考える際は、給付金が自己負担額を減らすため、控除の効果が薄れる可能性がある点に注意が必要です。
個人年金保険の年金や一時金にかかる税金
個人年金保険の場合、受け取る方法によって税金の計算方法が異なります。
年金形式で受け取る場合の税金
受け取った金額から支払った保険料の一部を差し引いた金額が雑所得として課税されます。
計算式は以下のとおりです。
例えば、年間120万円の年金を受け取り、支払保険料総額が2,000万円、予定受取年数が20年の場合、
計算は「120万円 - (2,000万円 ÷ 20年) = 120万円 - 100万円 =20万円」となり、この20万円が課税対象となります。
一時金で受け取る場合の税金
受け取った金額から払込保険料総額を差し引き、さらに最大50万円の特別控除を適用した後、その半分が一時所得として課税されます。課税対象額の計算式は以下のようになります。
例えば、受取一時金が500万円、払込保険料総額が400万円、特別控除額が50万円の場合、
計算は「(500万円 - 400万円) - 50万円 = 50万円」となり、50万円の1/2、つまり25万円が課税対象となります。
まとめ
保険にかかる税金は、保険の種類や受取方法によって大きく異なります。
- 生命保険や医療保険は基本的に非課税ですが、場合によっては贈与税が発生することもあります。
- 個人年金保険は、年金形式と一時金形式とで計算方法が異なります。
これらの内容を踏まえ、あなたに合った保険の選び方や税金対策を検討していただくことが大切です。さらに詳しい情報や具体的な疑問があれば、国税庁や専門家にご相談ください。

MONO Investment
投資のコンシェルジュ編集部は、投資銀行やアセットマネジメント会社の出身者、税理士など「金融のプロフェッショナル」が執筆・監修しています。 販売会社とは利害関係がないため、主に個人の資産運用に必要な情報を、正確にわかりやすく、中立性をもってコンテンツを作成しています。
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相続税
亡くなられた親などから、お金や土地などの財産を受け継いだ(相続した)場合に、その受け取った財産にかかる税金。
贈与税
個人から贈与により財産を取得したときにかかる税金。 なお、法人から贈与により財産を取得したときは、贈与税ではなく所得税がかかる。
個人年金保険
老後の必要な生活資金に対し、公的年金に上乗せ補完する目的で、自身で準備する保険。保険契約者は、毎月保険料を一定年齢まで払い込み、受取開始時期になると、一定期間または終身にわたって年金形式または一括で受け取ることが可能。 個人年金保険には、運用方法や受取期間などによってさ様々なタイプが存在。
雑所得
雑所得(ざつしょとく)とは、所得税法において定められた10種類の所得のうち、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得のいずれにも該当しない所得を指します。具体的には、公的年金や副業による収入、仮想通貨の売却益、FXの利益、非営業用貸金の利子などが該当します。 経費を差し引いた金額が課税対象となり、総合課税の対象となります。また、雑所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になります。
死亡保険金
死亡保険金とは、生命保険契約において、被保険者が死亡した際に受取人に支払われる保険金のことを指す。受取人や契約形態によって、相続税・所得税・贈与税のいずれかの課税対象となる場合がある。
一時所得
一時所得とは、継続的な収入ではなく、偶発的または一時的に得た所得のことを指す。例えば、懸賞の賞金、生命保険の満期返戻金、競馬の払戻金などが該当する。50万円の特別控除が適用され、課税対象額は控除後の金額の1/2となる。
基礎控除
基礎控除とは、所得税の計算において、すべての納税者に一律で適用される控除のことを指す。一定額の所得については課税対象から除外されるため、納税者の負担を軽減する役割を持つ。所得に応じて控除額が変動する場合もあり、申告不要で自動適用される。
特別控除
特別控除とは、一定の条件を満たした場合に特別に認められる所得控除のことを指す。例えば、不動産譲渡所得に対する3,000万円特別控除や、住宅ローン控除などが含まれる。通常の控除とは異なり、特定の政策目的のために設けられており、適用を受けるには条件を満たす必要がある。
課税対象額
課税対象額とは、税金の計算の基礎となる金額のことを指す。所得税であれば、総所得から各種控除を差し引いた後の課税所得が該当する。法人税では、益金から損金を差し引いた後の利益が対象となる。課税対象額が増えるほど税負担も増加するため、適切な税務対策を講じることが重要である
医療費控除
医療費控除とは、納税者が1年間に支払った医療費の一部を所得から控除できる税制上の制度を指す。自己や家族のために支払った医療費が一定額を超える場合に適用され、所得税や住民税の負担を軽減できる。対象となる費用には、病院での診療費や処方薬の費用のほか、一定の条件を満たす介護費用なども含まれる。確定申告が必要であり、領収書の保管が重要となる。
予定受取年数
予定受取年数とは、年金や分割払いの保険金を受け取る際に、受取人があらかじめ設定する受取期間のことを指す。年金保険や個人年金制度では、この期間の長さによって毎回の受取額が決まり、長期間にわたる場合は1回あたりの受取額が減少し、短期間では増加する。受取年数の設定は、税制やライフプランに影響を及ぼすため、慎重に検討する必要がある。
益金
益金とは、法人税の計算において、企業の所得に算入される収益のことを指す。売上高や営業外収益、資産の売却益、受取配当金などが含まれる。益金は損金と対になる概念であり、最終的な課税所得を決定する重要な要素となる。法人の税負担を適切に管理するためには、益金と損金の区分を正しく理解し、税務処理を行うことが求められる。
損金
損金とは、法人税の計算上、企業の所得から控除できる費用のことを指す。具体的には、給与、仕入原価、広告宣伝費、減価償却費などの事業に直接関連する支出が該当する。損金に計上できるかどうかは税法により定められており、計上可能な費用を適切に処理することで課税所得を抑えることができる。一方で、税務上の損金と会計上の費用が一致しない場合もあり、適切な管理が求められる。
非課税枠
非課税枠とは、税金が課されない金額の上限を指し、様々な税制に適用される制度。 例えば相続税では基礎控除額として「3,000万円+600万円×法定相続人数」が非課税枠となる。贈与税では年間110万円までの贈与が非課税。また、NISA(少額投資非課税制度)では年間の投資上限額に対する運用益が非課税となる。 このような非課税枠は、税負担の軽減や特定の政策目的(資産形成促進など)のために設定されており、納税者にとって税金対策の重要な要素となっている。
契約者
契約者とは、保険や投資信託などの金融商品において契約を締結する当事者のことを指す。契約者は契約の内容を決定し、保険料や掛金の支払い義務を負う。生命保険では、契約者と被保険者が異なる場合もあり、この場合、契約者が保険金の受取人を指定できる。投資信託では、契約者が運用を委託し、受益者として利益を得る。契約内容によっては、解約や変更の権限を有するため、慎重な契約の選択が求められる。
被保険者
被保険者とは、保険の保障対象となる人物。生命保険では被保険者の生存・死亡に関して保険金が支払われる。医療保険では被保険者の入院や手術に対して給付金が支払われる。損害保険では、被保険者は保険の対象物(自動車など)の所有者や使用者となる。被保険者の同意(被保険者同意)は、第三者を被保険者とする生命保険契約において不可欠な要素で、モラルリスク防止の観点から法律で義務付けられている。
受取人
保険契約における受取人とは、保険事故発生時に保険金を受け取る権利を持つ者のことをいう。生命保険の死亡保険金の場合、一般的には被保険者の遺族(配偶者や子など)が受取人に指定されるが、契約者の意思により自由に指定・変更が可能。法人契約の場合は会社が受取人となることも多い。受取人が複数指定されている場合は、各受取人の受取割合に従って保険金が分配される。相続税対策として、契約形態と受取人の関係が重要な検討要素となる。
保険料負担者
実質的に保険料を支払う者であり、必ずしも契約者と同一である必要はない。例えば、親が契約者となり子供を被保険者とする学資保険で、祖父母が保険料を負担するケースなどがある。税務上は保険料負担者が誰かによって、保険金受取時の税金(所得税・相続税・贈与税)の取扱いが異なるため、税金対策を考慮した契約設計では重要な要素となる。生命保険料控除の適用も、実際の保険料負担者が確定申告または年末調整で受けることができる。
年金形式
保険金や退職金を一定期間にわたって分割で受け取る方式。毎月、3ヶ月ごと、半年ごと、年1回など、定期的に決まった金額を受け取ることができる。老後の生活費を安定的に確保できるメリットがある。確定年金(一定期間)と終身年金(死亡するまで)の2種類があり、インフレに対応した物価スライド型や、将来の金利変動に連動する変動型なども存在する。税制面では「雑所得」として課税され、公的年金等控除が適用される場合もある。
一時金形式
保険金や退職金などを一括で受け取る方式。まとまった資金を一度に受け取ることができるため、住宅ローンの返済や子どもの教育資金など、大きな支出に充てやすいメリットがある。年金形式と比べて、総受取額は少なくなる場合が多いが、資金の即時活用や自己運用が可能。税制面では退職所得控除(退職金の場合)や相続税・贈与税の非課税枠(生命保険金の場合)などが関係し、状況によって有利な選択肢となりうる。インフレリスクや長生きリスクへの対応は自己責任となる点に注意が必要。