
債券投資するなら個別債券・債券投信・債券ETFどれがいい?仕組みとメリット・デメリット徹底比較
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公開:
2024.04.02
更新:
2025.06.07
インフレと金利上昇で債券利回りが見直され、株式一辺倒だった資金が債券市場へ流れ込んでいます。個人でも1000ドル単位で外債を買えたり、債券ETFで手軽に分散できたりと選択肢は多彩ですが、銘柄選定の手間やデフォルト、金利変動などリスクの顔ぶれも異なります。知らずに飛び込めば利息どころか元本を削る恐れも。本記事は個別債券、債券投信、ETFの仕組みとコスト、流動性、信用リスクを徹底比較し、目的別の活用法とあなたの許容度に合う見分け方を提示します。読み終えれば、学費準備から老後資金まで債券を戦略的に使い分けるヒントが得られます。
サクッとわかる!簡単要約
この記事を読むと、利息確保を優先する個別債券と、少額で機動的に売買できる債券ETF・投信のどちらが自分に最適かがわかるようになります。個別債券の確定利回りとデフォルト直撃リスク、ETFの分散と流動性、信託報酬によるコストを現実データで比較し、ラダー・ダンベル戦略や為替ヘッジの要否、少額外債サービスなど最新動向まで整理。リスクとリターンのバランスを可視化するフレームで、景気サイクルに応じた防衛と攻めの債券運用を自身のキャッシュフロー計画へ落とし込めます。さらに債券投資の未来を示すSTO事例も紹介し、情報感度を一段引き上げます。
債券とは?株式との違いをまずはわかりやすく:低リスクで利息が得られる
債券は、国や企業などが投資家から資金を調達するために発行する有価証券の一種です。一般的に、株式や投資信託と比較して安全性が高い金融商品と位置付けられています。債券の大きな特徴は、満期(償還日)があらかじめ定められている点です。発行体が財政破綻などの債務不履行に陥らない限り、満期日には元本である額面金額が投資家に返済されます。加えて、満期までの間、投資家は定期的に利子を受け取ることができます。ここでは、債券投資の基礎知識として、その仕組みや株式との主な相違点、そして債券投資が持つメリットとリスクについて整理し解説します。
債券の利息・満期・額面とは?満期保有なら元本と利息がほぼ確定
債券の基本的な仕組みは、投資家が国や企業などにお金を貸し、その見返りとして利息を受け取り、あらかじめ決められた期日(満期)に元本が返ってくるというものです。
投資家は債券を購入することで発行体に資金を提供し、発行体はそのお礼として、一定の利率に基づいた利息を定期的に支払います。そして満期を迎えると、債券に記された金額(額面)が投資家に返済されます。
このように、債券は「お金を貸すことで利息を受け取り、最後に元本が戻ってくる」仕組みになっており、あらかじめ条件が決まっている点が特徴です。
株式と債券の違い──「会社の一部を持つ」か「お金を貸す」か
債券と株式は、どちらも企業や国が資金を集める手段ですが、仕組みやリスクの性質は大きく異なります。まず、権利の違いです。株式は会社の「持ち主」としての権利を表します。株を持つ人は、その企業の一部を所有していることになり、配当を受け取ったり、株主総会で議決に参加したりできます。
一方、債券は企業や国に「お金を貸す」契約です。債券を持っていても経営には関わらず、利息と満期時の元本を受け取るだけです。
次に、価格の動きやリスクの違いです。 株価は企業の業績や景気の変化などで大きく上下し、買ったときより値下がりすることもあります。元本保証もありません。それに対して債券は、満期まで保有すれば元本が返ってくるのが基本で、価格の変動も株式ほど大きくありません。ただし、途中で売却する場合は、金利の動きによって価格が変わり、損をすることもあります。
また、倒産時の扱いにも差があります。 株式は「出資」の扱いなので、企業が倒産してしまうと、返ってくるお金がゼロになることもあります。債券は「借金」の扱いなので、返済の優先順位が株式より高く、破綻しても一部が戻る可能性があります。
まとめると、債券は「お金を貸して利息と元本を受け取る」比較的安全な投資で、リターンも控えめ。株式は「会社の一部を持って、成長の利益を狙う」分だけ、リスクもリターンも大きくなる傾向があります。
債券への投資は個別債券の他に投信・ETFも存在
「株式に投資する」と耳にする時、ほとんどの人が個別銘柄への投資を思い浮かべるでしょう。しかし株式への投資は、個別株への投資はもちろん、株式型の投資信託やETFを通じた投資もできます。特に海外株式に投資する際は、投資信託やETF経由の投資家も多いです。
そして債券も株式と同様に、個別の債券への投資に加えて、債券型の投資信託やETFによる債券投資も可能です。債券型の投資信託やETFに投資することで、幅広い種類の債券への投資が可能です。因みに債券型の投資信託やETFは、株式型の投資信託やETFに次ぐ運用残高があります。
ここでは債券投資を検討する際、個別の債券に投資するのか、債券型の投信・ETFに投資するのか判断するために、それぞれの仕組みやメリット・デメリットをご説明します。
個別債券に投資する3つのメリット
債券投資を行う際に、個別債券に投資するメリットには以下があります。
①どの銘柄に投資するか自ら選択できる
②利息(クーポン)を直接得られる
③満期を踏まえた投資戦略の実行が可能
メリット①どの銘柄に投資するか自ら選択できる
個別債券への投資なら、自らのニーズに合わせて柔軟な投資ができます。短期債から長期債、そしてローリスクからハイリスクまで、資金ニーズに合わせた投資が可能です。
債券投資はインカムゲインが得られますが、投資時点で利息額も把握できます。自らどの銘柄に投資するか選択できる個別債券への投資は、非常に自由度が高いです。
メリット②利息(クーポン)を直接得られる
債券に投資することで多くの場合、定期的な利息収入が得られ、利息は直接証券口座などに入金されます。債券の利息は、基本的に発行時点で決められるため、購入時点で利息収入が確定します。
債券型の投資信託やETFでは、運用成績により年度毎に分配金および配当金が異なることがあります。しかし個別債券への投資なら、投資時点で利息収入が確定するため、満期まで保有する際の投資収益が予測しやすいです。
メリット③満期を踏まえた投資戦略の実行が可能
ほとんどの債券には満期があるため、投資時点で満期までの年限と満期まで保有した場合の利息収入の算出が可能です。
10年後に子供の大学進学が予想される場合、10年債を購入して利息収入及び償還資金を大学の学費に充当する、といった利用ができます。
株式と異なり債券には満期があるため、満期を踏まえた様々な投資戦略が考えられます。
個別債券に投資する3つのデメリット
一方、個別債券に投資するデメリットとしては以下があります。
①投資金額が大きい
②債券の選択などに手間がかかる
③デフォルトリスクを直接引き受けることになる
デメリット①投資金額が大きい
債券市場は国内外ともに、基本的に機関投資家中心の市場です。近年は個人投資家への販売
も進んではいますが、国内債券市場は、今でも機関投資家中心です。そのため、個別債券に投資する際は、最低100万円以上の大きな資金が必要となるケースが一般的です。
近年は、100ドルや1,000ドル単位で投資できる債券も増えていますが銘柄は限定的です。
デメリット②債券の選択などに手間がかかる
債券には様々な種類があります。それらの中から、自ら希望するリターンを得られる債券を見つけるのに手間がかかります。そして債券といえども投資リスクがあるため、リスクの把握も必要です。
様々な種類の債券から自らの希望にあう債券を選び出し、更にリスクも把握した上で投資を行うことは、個人投資家にとってはハードルが高いです。
デメリット③デフォルトリスクを直接引き受けることになる
日本国債や米国債のデフォルトリスクは、ほとんどないといえます。しかし、社債や新興国の国債にはデフォルトリスクがあります。個別債券への投資はデフォルトリスクが無視できません。
社債に投資した場合、発行体企業が経営破綻すれば投資資金はゼロとなる可能性があります。債券型の投資信託やETFの場合、様々な債券に投資しているので、保有債券にデフォルトが発生してたとしても。個別債券が全体に与える影響は限定的です。
一方で、個別債券へ投資する場合、デフォルトが発生するとその影響は自らの投資資金を直撃します。
信用格付けの読み方は以下の記事で詳しく解説しています。
債券型の投資信託や債券ETFに投資する3つのメリット
債券型の投資信託や債券ETFに投資するメリットとしては、以下があげられます。
①個別の信用リスクを考える必要がない
②少額から投資可能
③満期がなく株式と同じように売買可能
メリット①個別の債券を選んだり信用リスクを考える必要がない
債券型の投資信託やETFが投資対象とするのは米国債、日本国債、新興国社債、海外社債、国内社債など様々ですが、それぞれファンド毎に投資対象が設定されています。米国長期債が投資対象なら、幅広く米国長期債へ投資されます。
よって投資家は個別の債券を選ぶ必要はなく、どのような種類の債券に投資したいのかを選ぶのみで、債券投資ができます。また対象とする債券に幅広く投資されるため、個別債券の信用リスクを細かく考慮する必要がありません。
債券型の投資信託やETFなら、個別債券に投資する際のハードルとなる、債券の選択の手間や個別銘柄の信用リスク把握の手間を回避できます。
メリット②少額から投資可能
個別債券は投資単位が大きいのが一般的ですが、債券型の投資信託やETFは、通常の投資信託やETFと同様に1万円や1,000円単位で投資可能です。
個別債券への投資は、多額の投資資金が必要となることも多いです。しかし、ETFや投資信託なら少額から投資できるため、投資初心者でも少しずつ債券投資をスタートできます。
メリット③満期がなく株式と同じように売買でき換金の自由度が高い
個別債券には満期があり、満期が到来すると投資資金は返済されます。しかし、債券型の投資信託やETFには満期がありません。また、資金需要があるタイミングでの売却が容易です。
債券型の投資信託や債券ETFに投資する3つのデメリット
債券型の投資信託やETFに投資するデメリットとしては、以下があげられます。
①利息(クーポン)を投資家が自由に選べない
②満期がないため価格変動リスクがある
③債券投資の面白さがない
デメリット①利息(クーポン)投資家が自由に選べない
個別債券の利息は、半年毎や1年毎に定期的な支払いが行われます。債券型の投資信託やETFも定期的な分配金の支払いがあるものの、分配は目論見書に記載のタイミングで行われるため、いったん投資信託やETFにプールされます。
個別債券へ投資する場合、利息を受け取るタイミングを加味して投資先を選べますが、投資信託やETFで債券に投資する場合には、投資家が分配金を受け取るタイミングや利息の金額を選ぶことができません。
デメリット②満期がないため価格変動リスクがある
個別債券は満期まで保有すれば、満期日まで利息を受け取ることができ、また満期日に投資資金の全額が返済されます。海外債券に為替リスクがあるものの、国内債券の場合はデフォルトがなければ、満期までの保有で投資資金が減少するリスクはありません。
しかし、債券型の投資信託やETFは満期がありません。また日々価格変動が発生するため、売却のタイミングで投資時点の価格を下回る可能性があります。
債券型の投資信託やETFの価格変動は、株式型などに比べると小さいですが、個別債券への投資では、債券の満期まで保有すれば発生しない、価格変動のため売却時に損失発生の可能性があります。
デメリット③債券投資の面白さがない
個別の債券への投資は非常に自由度の高い投資です。様々な債券が存在するなかで、自らの投資方針に基づいた年限、利息などの債券を選ぶという面白さがあります。しかし債券型のETFや投資信託は、満期がなくそれぞれ規格が決まっており、個別債への投資に比べると面白みが欠ける面が否定できません。ただし面白さがないからこそ、投資信託やETFなら初心者でも投資のハードルが低いともいえます。
債券投資の最近のトピック
債券は機関投資家中心の金融商品ですが、個人投資家にとっても魅力的です。なぜなら、債券は安定的な利息が得られるとともに、デフォルトがなければ満期時に投資資金の全額が返金されるからです。
債券投資の最近のトピックとして以下の2つについて解説します。
・投資単位の少額化
・STOの出現
①投資単位の少額化
個別債券への投資にはこれまで多額の投資資金が必要でした。
しかし楽天証券の「債券マルシェ」(2023年7月サービスイン)やSBI証券では、海外の既発債について、1,000ドル単位での売買サービスを始めています。個人向け国債の1万円単位には及びませんが、十数万円で米国債などの利回りの高い海外債券に投資可能です。また「債券マルシェ」は2024年3月25日から国内の既発債の取扱いも開始するなど、個人で取引できる債券の種類は増加傾向にあります。
これまで債券の少額投資は、債券型のETFや投資信託が定番でした。しかし現在は、十数万円の資金が用意できれば、様々な海外債券への投資ができ、債券でも投資手法の小額化が進んでいます。
②STO(セキュリティトークンオファリング)の出現:有価証券をブロックチェーン上で発行
STO はSecurity Token Offeringの略であり、デジタル化した有価証券をブロックチェーン上で発行して資金調達を行う仕組みです。
現在の債券はほとんどが電子化されていますが、発行の仕組み自体は物理的な紙の債券があった時代とそれほど変わっていません。STOは暗号資産の取引で利用されている、ブロックチェーン技術を利用した債券発行、というべきものです。ブロックチェーン技術の利用で、発行手続きに手間と時間がかかる債券発行について、コスト削減や小口証券発行の円滑化が期待されています。
債券投資を効率化させる2つの投資戦略
資産運用の観点では、投資先は分散させてリスクを分散させるべきです。複数の債券への分散投資でリスクを下げ、またリターン向上にもつなげられます。債券の分散投資について、有力な2つの投資戦略を紹介します。
この記事のまとめ
個別債券は利回り確定と満期償還が魅力ですが、銘柄調査と多額投資、発行体破綻時の元本毀損を受け止める覚悟が欠かせません。一方、債券ETF・投信は1万円前後から分散と高流動性を得られる反面、信託報酬や市場価格変動で利回りが削られがちです。判断の軸は目標利回り、保有期間、換金時期、総コスト、他資産との相関であり、金利サイクルや為替動向も加味してデュレーションと信用格付けを比較しましょう。ポートフォリオ全体のリスク許容度と照合し、ラダー・ダンベル戦略で個別債券を組むか、ETFで機動的に調整するかを選ぶのが合理的です。必要に応じて専門家に相談するのも選択肢です。
金融・投資ライター
大手証券グループ投資会社への勤務を経て、個人投資家・ライターに。株式関連、為替関連、資産運用関連を中心に執筆中。Yahoo!トップページに掲載実績あり。第一種証券外務員資格保有。
大手証券グループ投資会社への勤務を経て、個人投資家・ライターに。株式関連、為替関連、資産運用関連を中心に執筆中。Yahoo!トップページに掲載実績あり。第一種証券外務員資格保有。
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債券
債券(サイケン、英語表記:Bond)とは、発行者が投資家に対して将来一定の金額を支払うことを約束する金融商品です。 国や地方自治体、企業などが資金を調達する目的で発行し、投資家はこれを購入することで、定期的に利息(クーポン)を受け取ります。満期が来ると、投資した本金が返済されます。 債券はリスクが比較的低く、安定した収入を求める投資家に選ばれることが多いです。 また、市場で自由に売買が可能であるため、流動性も確保されています。債券市場は世界的にも広がりを見せており、多様な投資戦略に利用されています。
投資信託
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を一つの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する金融商品です。運用によって得られた成果は、各投資家の投資額に応じて分配される仕組みとなっています。 この商品の特徴は、少額から始められることと分散投資の効果が得やすい点にあります。ただし、運用管理に必要な信託報酬や購入時手数料などのコストが発生することにも注意が必要です。また、投資信託ごとに運用方針やリスクの水準が異なり、運用の専門家がその方針に基づいて投資先を選定し、資金を運用していきます。
ETF(上場投資信託)
ETF(上場投資信託)とは、証券取引所で株式のように売買できる投資信託のことです。日経平均やS&P500といった株価指数、コモディティ(原油や金など)に連動するものが多く、1つのETFを買うだけで幅広い銘柄に分散投資できるのが特徴です。通常の投資信託に比べて手数料が低く、価格がリアルタイムで変動するため、売買のタイミングを柔軟に選べます。コストを抑えながら分散投資をしたい人や、長期運用を考えている投資家にとって便利な選択肢です。
クーポン(利息)
クーポンとは、債券を保有している投資家が発行体(国や企業)から定期的に受け取る利息のことです。クーポンの金額は、債券発行時に設定された利率(クーポン利率)に基づき計算されます。通常、半年ごとまたは1年ごとに支払われることが多いです。クーポン収入は安定したキャッシュフローをもたらし、特に長期保有する債券投資家にとって重要な収益源となります。
償還
償還とは、債券の満期到来時に発行体が投資家に対して元本を返済することを指します。例えば、10年満期の債券であれば、10年後に元本が返金されます。債券の発行元が満期までの間に利息を支払い、償還時に元本を返済することで投資家は利息収益と元本の返金を得ます。ただし、償還には発行体の信用力が影響し、デフォルトリスクが存在する場合があります。
債務不履行(デフォルト)
債務不履行(デフォルト)とは、企業や国などの債務者が、借入金や債券などの元本や利息の支払いを、契約どおりに履行できなくなる状態を指します。利払いの遅延や元本返済の停止が発生した時点で、デフォルトとみなされます。 債務不履行が発生すると、債券を保有している投資家は、予定されていた利息や元本の一部または全額を受け取れないリスクに直面し、損失を被る可能性があります。特に、国による債務不履行(ソブリン・デフォルト)は、為替市場や株式市場にも連鎖的な影響を与え、国際的な金融不安を引き起こす要因となることがあります。 また、支払いの一時的な遅延や手続上の不備によって形式的に契約違反が生じる「テクニカル・デフォルト」というケースも存在します。これは即時の経済的破綻を意味するわけではありませんが、発行体の信用力に対する警戒が強まるきっかけとなり得ます。 投資においては、こうしたデフォルトの可能性(デフォルトリスク)をあらかじめ評価し、債券の発行体の財務状況や格付、市場環境を踏まえてリスク管理を行うことが重要です。
元本
元本とは、投資や預金を始めるときに最初に出すお金、つまり「もともとのお金」のことを指します。たとえば、投資信託に10万円を入れた場合、その10万円が元本になります。 運用によって利益が出れば、元本に運用益が加わって資産は増えますが、損失が出れば元本を下回る「元本割れ」の状態になることもあります。 元本が保証されている商品(例:定期預金、個人向け国債など)もありますが、多くの投資商品では元本保証がないため、どれくらいのリスクを取るかを理解しておくことが大切です。
額面
額面とは、金融商品に記載されている公式な金額のことを指します。主に債券や株式などで使われる用語で、たとえば債券であれば、満期時に発行体が投資家に返済する元本の金額、株式であれば、1株あたりの発行価額(旧来の額面株式)を意味します。 債券においては、償還金額や利息の計算基準となる重要な金額であり、市場価格(実際に売買される価格)とは異なる点が特徴です。たとえば、額面100円の債券が市場で95円で取引されていれば「アンダーパー」、105円であれば「オーバーパー」と呼ばれます。 資産運用においては、額面を基準に利回りや価格変動を評価することが多く、特に債券投資や定期預金、仕組債の設計において欠かせない基礎概念です。額面と市場価格の差異を理解することは、投資判断やリスク評価に直結します。
満期
満期とは、金融商品や契約の期間が終わる時点のことを指します。たとえば、定期預金や債券などにはあらかじめ決められた運用期間があり、その期間が終了する日を満期といいます。満期になると、元本や利息が支払われたり、契約が終了したりします。つまり、投資したお金が戻ってくるタイミングのことを意味します。投資を行う際は、この満期がいつになるのかを確認しておくことが大切です。
社債
社債とは、企業が事業資金を調達するために発行する「借金の証書」のようなものです。投資家は社債を購入することで企業にお金を貸し、その見返りとして、あらかじめ決められた利息(クーポン)を一定期間ごとに受け取ることができます。満期が来れば、企業は投資家に元本を返済します。 銀行からの融資とは異なり、社債は不特定多数の投資家から直接資金を集める方法であり、企業にとっては柔軟かつ効率的な資金調達手段です。 投資家にとって社債の魅力は、株式に比べて価格の変動が小さく、定期的な利息収入が得られる点にあります。一方で、発行体である企業が経営破綻した場合、元本が戻らないリスクがあるため、信用格付けや業績などを十分に確認することが重要です。 安定的な収益を目指しつつ、リスク管理も重視する投資家にとって、社債はポートフォリオの中核を担いうる資産クラスのひとつです。
国債
発行体が各国中央政府の債券を国債といいます。発行目的や利払い方式などで種類が分別されます。中央政府に資金需要が発生した際に、国債を発行して資金の調達を行うことがあります。 投資家は国債を購入することで、発行体である中央政府へ資金を提供し、その見返りとして半年に1回などのペースで、中央政府から利子を受け取ります。償還期限までに中央政府の財政が悪化するなど、債務が履行されない状況に陥らなければ、満期には額面どおりの金額が投資家へ償還される仕組みです。 国債には、固定利付国債、変動利付国債、物価連動国債などがあります。
信用リスク(クレジットリスク)
信用リスクとは、貸し付けた資金や投資した債券について、契約どおりに元本や利息の支払いを受けられなくなる可能性を指します。具体的には、(1)企業の倒産や国家の債務不履行(いわゆるデフォルト)、(2)利払いや元本返済の遅延、(3)返済条件の不利な変更(債務再編=デット・リストラクチャリング)などが該当します。これらはいずれも投資元本の毀損や収益の減少につながるため、信用リスクの管理は債券投資の基礎として非常に重要です。 この信用リスクを定量的に評価する手段のひとつが、格付会社による信用格付けです。格付は通常、AAA(最上位)からD(デフォルト)までの等級で示され、投資家にとってのリスク水準をわかりやすく表します。たとえば、BBB格付けの5年債であれば、過去の統計に基づく累積デフォルト率はおおよそ1.5%前後とされています(S&Pグローバルのデータより)。ただし、格付はあくまで過去の情報に基づいた「静的な指標」であり、市場環境の急変に即応しにくい側面があります。 そのため、市場ではよりリアルタイムなリスク指標として、同年限の国債利回りとの差であるクレジットスプレッドが重視されます。これは「市場に織り込まれた信用リスク」として機能し、スプレッドが拡大している局面では、投資家がより高いリスクプレミアムを求めていることを意味します。さらに、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の保険料率は、債務不履行リスクに加え、流動性やマクロ経済環境を反映した即時性の高い指標として、機関投資家の間で広く活用されています。 こうしたリスクに備えるうえでの基本は、ポートフォリオ全体の分散です。業種や地域、格付けの異なる債券を組み合わせることで、特定の発行体の信用悪化がポートフォリオ全体に与える影響を抑えることができます。なかでも、ハイイールド債や新興国債は高利回りで魅力的に見える一方で、信用力が低いため、景気後退時などには価格が大きく下落するリスクを抱えています。リスクを抑えたい局面では、投資適格債へのシフトやデュレーションの短縮、さらにCDSなどを活用した部分的なヘッジといった対策が有効です。 投資判断においては、「高い利回りは信用リスクの対価である」という原則を常に意識する必要があります。期待されるリターンが、想定される損失(デフォルト確率×損失率)や価格変動リスクに見合っているかどうか。こうした視点で冷静に比較検討を行うことが、長期的に安定した債券運用につながる第一歩となります。
分配金
投資信託の収益から投資家に還元するお金のこと。 決算時に支払われるのが一般的。 ただし、運用成果や今後の運用戦略を考慮したうえで運用会社が決めるため、決算期ごとに毎回支払われるとは限らず、金額も未定。 分配金の支払い原資は投資信託の資産であり、分配金を支払うと資産は減る。 このため、分配金を支払うことで、その分だけ基準価額が下がる。
インカムゲイン(インカム)
インカムゲイン(インカム)とは、株式や債券、不動産などの資産を保有していることで定期的または継続的に得られる収益のことを指します。具体的には、株式の配当金、債券の利息、不動産の家賃収入などが代表的な例です。一方で、資産の売買差益から生まれるキャピタルゲインとは異なり、保有し続けることで一定のペースで収入を得る点が特徴です。 インカムゲインを重視する投資では、安定したキャッシュフローを得られることが大きな魅力となります。例えば、株式の配当金は企業の利益から支払われますが、企業の業績や配当方針に応じて増減があるため、定期的なチェックが必要です。債券の利息は発行体の信用力や金利情勢に大きく左右され、金利が上昇すると既存債券の価格が下落するリスクがあります。不動産投資では家賃収入がインカムゲインとなりますが、空室が続いたり修繕費がかさんだりするリスクがあるほか、売却時の価格も景気や立地に左右されるため、投資額の回収が遅れる可能性があります。 これらのリスクを考慮する一方で、インカムゲインには安定性というメリットがあります。資産を保有しているだけでも定期的に資金が手に入り、再投資や生活費に回すことで資産形成を円滑に進めやすい面があります。また、いざ急に資金が必要になった場合には、すぐに売却しなくても配当金や利息で一定の収入を得られる可能性があるため、心理的な安心感につながることもあります。 ただし、インカムゲインを得ようとするあまり、高配当や高利回りをうたう投資商品ばかりに偏ると、発行体の信用リスクや価格変動リスクが高まるケースも考えられます。特に、株式の配当は企業の業績が悪化すれば減配や無配となる恐れがあり、債券の場合でも発行体の破綻リスクや金利上昇リスクが存在します。不動産投資では物件管理の手間や費用が大きく、地方物件などでは買い手が少なく流動性リスクも高くなるため、分散投資の観点で他の資産とバランス良く組み合わせるのが望ましいでしょう。 総じて、インカムゲインは、投資から生まれる継続的な収益を得るための有力なアプローチです。特に、キャピタルゲインだけに頼らず、配当や利息、家賃収入などの定期的な収入源を得ることでリスクを分散しながら安定した資産運用を目指すことができます。ただし、投資対象の選定やリスク管理は欠かせないポイントであり、投資する資金やライフプラン、リスク許容度に応じて最適なバランスを見極める必要があります。
セキュリティトークンオファリング(STO)
セキュリティトークンオファリング(STO)とは、「Security Token Offering」の略で、ブロックチェーン技術を活用してデジタル化された有価証券(セキュリティトークン)を発行し、資金調達を行う手法です。 例えば、不動産STOとは、不動産を小口化し、「セキュリティトークン」として発行・販売する仕組みです。 ブロックチェーン技術を活用することで、従来の不動産投資よりも透明性が高まり、取引が効率化されます。これにより、少額から不動産投資に参加できる機会が広がっています。
ブロックチェーン
ブロックチェーンとは、取引の記録を「ブロック」という単位でまとめて、それを鎖のようにつなげて保存していく仕組みのことを指します。この技術の最大の特徴は、特定の管理者がいなくても、みんなで記録を共有・確認できる点にあります。たとえば、仮想通貨の取引記録はこのブロックチェーン上に保存されており、誰でもその履歴を見ることができます。記録が一度保存されると、改ざんが非常に難しくなるため、安全性と透明性に優れています。投資の世界では、仮想通貨の基盤として知られており、近年は金融や不動産、証券などさまざまな分野でも注目されています。投資初心者にとっては、まず仮想通貨の仕組みを理解する入り口として知っておくと役立つ技術です。
分散投資
分散投資とは、資産を安全に増やすための代表的な方法で、株式や債券、不動産、コモディティ(原油や金など)、さらには地域や業種など、複数の異なる投資先に資金を分けて投資する戦略です。 例えば、特定の国の株式市場が大きく下落した場合でも、債券や他の地域の資産が値上がりする可能性があれば、全体としての損失を軽減できます。このように、資金を一カ所に集中させるよりも値動きの影響が分散されるため、長期的にはより安定したリターンが期待できます。 ただし、あらゆるリスクが消えるわけではなく、世界全体の経済状況が悪化すれば同時に下落するケースもあるため、投資を行う際は目標や投資期間、リスク許容度を考慮したうえで、計画的に実行することが大切です。